あの映画にもうひとり #01|LA LA LAND

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いつだって映画には、こぼれ落ちる“誰か”が存在する。そんな作中には登場しなかった“もうひとり”を想像し、描き出すことで、映画の舞台である「町」の風景が、さらなる広がりを見せるのではないか。本連載では、毎回異なる映画作品をモチーフに、新たな人物を創造していく。制作は、デザイナー・イラストレーターのeryと、ライター・エディターの伊藤紺によるユニットNEW DUGONG。

連載初回で取り上げるのは、2017年公開の映画『LA LA LAND』。夢追い人溢れる陽気な町・ロサンゼルスに暮らす、夢見がちな1人の青年の物語とはーー。

Text / Illustration:NEW DUGONG
Edit:Yosuke Noji

アレハンドロ(27)|パーティオーガナイザー

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彼は会員制パーティーのオーガナイザー。実家はメキシコのとうもろこし農場。27歳。幼い頃から経営者に憧れ、19歳の時に夢追い人溢れるL.A.に移住。地元の家族や友人たちに、自分の華々しい変化を見せたくて日夜SNSにリゾート地での暮らしをアップし続けた。

しかし、とうもろこしの収穫によりコツコツ貯めたお金で購入したMacBookをカフェで盗まれるのとほぼ同時に、師匠として仰いだ男にも騙され、22歳の夏には一文無しに。何も知らない家族から届いたとうもろこしを、湯がいてぼそぼそ食べる暮らしを2週間続けた。

とうもろこしが底をついた日、限界を迎えた彼は食べ物を求めてとあるパーティー会場に潜り込む。気づくと目の前に男女がいた。2人の会話から女性は女優志望で、男性は脚本家ということがわかった。ミアと名乗る黄色のドレスを着たその女性は女優としての自分を精一杯PRしていたが、脚本家の熱い眼差しは明らかに浮ついたものだった。彼は脚本家と自分の元師匠を重ねる。人の夢を搾取する人間の浅はかさ、そして、そんな人間に平気で潰される「夢」の儚さに涙が出た。

会場を後にした彼はL.A.の夜を歩く。ほぼ反射的に美しい夜景を撮影するも、すぐに削除ボタンを押した。「これまでこの町の光ばかりを追いかけてきた。だけどここにはまだたくさんの闇がある。僕はこの町の闇を照らしたい」彼は初めてそう思った。

それから5年。彼は今、夢を持つ人々が集う会員制パーティーのオーガナイザーとして名を馳せている。彼のパーティーには「ドリーム・イエロー・タイム」と呼ばれる、夢追い人のマッチングを図る時間があり、多くの意義ある出会いを生んできた。現在、法人化の準備を進めていて、彼はもうじき、経営者になる。会社名はやっぱり「ドリーム・コーン」だ。

■NEW DUGONG
「NEW DUGON(ニュージュゴン)」はデザイナー・イラストレーターのeryと、ライター・エディターの伊藤紺による制作ユニット。企業の広告記事や、ファッションメディアでの連載など、ウェブコンテンツの制作を中心に、リトルプレスの発刊、自主制作ラジオの配信、トークイベントの開催など、幅広く活動する。

HP:http://newdugong.com/

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