From YOUth #01|Daily Coffee Stand 小川優

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あらゆる「商品」が合理的につくられ、対価さえ支払うことができれば、ほぼなんでも手に入れることのできる現代。選択の自由がこれほどまで高まっている時代だからこそなのか、その自由を逆手にとり、これまでにない売り方や作り方を目指す異端者たちがいる。

連載シリーズ・FROM YOUthでは、そんな新たな売り方・作り方を志向する20代〜30代の「店主」たちの試みをエッジなユースカルチャーと位置づけ、インタビューを通じ、時代を生き抜くヒントを探す。

Vol.1に登場するのは、2016年に東京都中野区野方にコーヒースタンドをオープンさせた小川優さん。Daily Coffe Standという名前の通り、個人経営のショップながら毎日休むことなくタフにコーヒーを提供している同店。野方にお店を構えるに至った経緯と店にかける想いを聞いた。

Text:Yosuke NOJI
Photo:Natsuki KURODA
Edit:Shun TAKEDA

岡山で経験したショップの立ち上げが、地元で開店したきっかけ

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Q1.お店を始めようと思ったきっかけは?

体調を崩して、新卒で働いていた広告代理店のグループ会社を休んでいる期間に、会社に戻るでも転職するでもない選択肢があることに気づいたことかな。もともとお店を持つことに興味があったから、今回は会社に属さないという選択をしてみようと思った。単純に、満員電車とかネクタイ締めるのとかが嫌だったのもありますけどね(笑)。

Q2.退社後、すぐに自分のお店を立ち上げた?

まず、高円寺の「here we are marble!」というカフェでアルバイトをしたんだけど、姉夫婦から「新しくお店を始めるから手伝って欲しい」って誘われて。「bollard」っていう岡山県の宇野にある生活用品とコーヒーを扱ったお店で2年半ぐらい働いた。宇野は瀬戸内海に面した港町で、直島や豊島、高松へのフェリー発着所としても知られてる町。

Q3.「bollard」はどんなお店なんですか?

セレクトされた生活用品と、コーヒーを提供しているお店。コーヒーも含めてひとつひとつのものと真摯に向き合って仕事をしている良い店です。bollardって単語は、船を停泊させるときに縄をひっかけておくための、柱のこと。

bollard夜 トリミング

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フェリー港のすぐそばにあることもあり、直島の地中美術館に出かける国内外の観光客の方と地元の人が入り混じっていて、セレクトが効いているのに風通しのいい、そんなお店なんですよ。

Q4.そこで、初めて本格的なコーヒーの仕事を?

「here we are marble!」ではカフェ業務全般って感じだったから、コーヒーの専門的な仕事をしたのは「bollard」が実質はじめて。誘ってくれた姉夫婦もお店の立ち上げが初めてだったから、みんなで全力の手探りをした期間だった。

Q5.そこから自分のお店を持とうと考えたのは、どうして?

「bollard」を立ち上げて、店ひとつで町に新しい価値と関係性が生まれてどんどん変化していくのを目の当たりにして、店を持つって改めておもしろいなって思った。あと、いくら立ち上げから手伝っていたとしても、自分でお金を出してるわけじゃないから、最後の最後で甘えが出ちゃう。全てを自分の責任でコントロールしていくためには、自分の店を持つしかないんだろうなって。

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Q6.東京の中でも、野方に店を開いた理由は?

野方に決めた理由……。最初は「祐天寺」とか「池尻大橋」とか、それこそ雑誌とかで話題になっている町に出店することも考えたんだけど、「10年後もこの町を好きでいられるか?」って考えると自信がなくて。野方が超ラブリーってわけじゃなかったけど、少なくとも地元でもある野方を10年後に嫌いになってることはないと思った。あ、今は野方超ラブリーですよ。

Q7.他に候補地はあった?

アルバイトをしていた高円寺や地元から近い中野。たぶん自分にとって重要なのは“庭感”があることで、新宿渋谷なんかは何回も行くけど、いつまで経っても遊びに行く町って感覚が抜けない。生活フィールドの一部だと感じられる町に、店を出したかったんです。

圧倒的リアルシティ・野方の心地よさ

Q8.野方ってどんな町?

一言でいうと、圧倒的リアルシティ(笑)。

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Q9.リアルシティ?

野方からは生活のにおいしかしない(笑)。5本の商店街からなる町なんだけど、どこもここで暮らしている人のためのお店、って感じなんだよね。背伸びしてる人がいなくて、みんながそれぞれむき出しの日常生活を送っている町。

この前なんて、表参道で美容師やってる友達がお店に来てくれたんだけど、このへんにはいないタイプの子だったから店内中がザワついた(笑)。でも、そういう生活の場としての町に店を出して、自分のお店も生活の一部に組み込んでもらえたら素敵だなって。

Q10.野方で通っているお店は?

味噌ラーメンの「花道」と、やきとんの「秋元屋」。野方の二大コンテンツと言っても良い存在で、他の地域からもこのお店をめがけてやって来る人がいるぐらい。このあと、時間あるなら紹介がてら秋元屋に飲みに行きましょうよ(編集部註:このあと、やきとん片手にヘロヘロになるまで飲みました)。

新しいお店だと、カウンターで揚げたての天ぷら食べさせてくれる「天若」は、オープンのときから仲良くさせてもらってるし、「野方餃子」は普通のご飯でも飲みでも使い勝手が良くて美味しい。

そういえば、野方って「野方◯◯」っていうお店が多くて、みんな野方好きだよね。

Q11.飲食店以外で好きな場所は?

野方文化マーケット。シャッターをおろしちゃってる店舗も多いけど、昭和の匂いがそっくりそのまま残っていて、ドラマの撮影なんかにも良く使われる。圧倒的ヤミ市感。若い子がマーケット内で花屋を始めたりもしてるから、ここがその名の通り、また文化の発信地になれるような日が来るとおもしろいね。

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