From YOUth #08|DAILY SUPPLY SSS 小田桐奨 中嶋哲矢

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団地との繋がりにみる町と店の可能性

Q9.SSSには、地元のお客さんは多い?

中嶋:
本当に周りにお店がないから、逆に結構来てくれますね。最初事務所として借りていたときも、ごはん食べる場所もなくて(笑)。自転車とか車で行かないと本当にお店がないから、近所のおばあちゃんとかは、ファミマのイートインが喫茶スペースで。そこにみんな通っていたみたいだから、「こんなとこが出来てうれしい」って言って来てくれます。
まわりには若い人が住んでいる一軒家とかも多いし、都内の人でも、車持ってると意外に来やすいから、若いお客さんも多いですね。

小田桐:
この場所はたぶん、店の裏にある団地の買い物の場として作られたんですよね。団地も900弱くらい戸数があるから、その人たちだけでも相当な人がいる。もともとこの場所に人がいっぱい来ていたというのは、大家さんからも聞いていたから。ちょっと変えれば、また人が来てくれるだろうなっていう確信はなんとなくあって。見た目は変わってないけど、また人が集まってきたら、その風景って価値があるなと。
0Q8C2602 小田桐:
これは木村石鹸の木村社長から聞いた話ですが、昔、地域コミュニティがまだ強かったときは、夜の決まった時間に、各家庭が排水溝に米の磨ぎ汁を流すっていう風習があったらしくて。それをすると、排水管が綺麗に保てるという。いまはマンションとか、それぞれ生活の時間がバラバラになっちゃって、そんなことは出来なくなっちゃったんだけど。でもその話を聞いて、団地でいまそういうことをやったらおもしろいなって。

中嶋:
それ絶対いいよね。そういうのやってみたいな(笑)。

小田桐:
この前「お米を持って帰るのが大変だから、今度家に持って来て!」っていうお客さんがいて。こっちから御用聞きみたいにいくのは、ちょっと嫌だなと思っていたけど、少し待ってたら、そういうきっかけが出来始めた。団地との繋がりが、これから色んな形で出来ていくといいなと思います。
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Q10.お隣のスペースについて教えてください。

小田桐:
いまは古道具などを売っていますが、今後は本のライブラリーにする予定です。

中嶋:
奥を事務所スペースにして、手前を図書館みたいに本棚作って。ちょうど近所にあった本屋が潰れちゃったんです。そこは半分コンビニ、半分本屋で、野菜も売ってる(笑)。結構ちゃんと本を売ってて良いお店だったんだけど。

店舗の隣。取材当日、手前には各地で見つけてきた古道具が並ぶ。奥は、シキナミカズヤ建築研究所SKALの事務所スペース。
店舗の隣。取材当日、手前には各地で見つけてきた古道具が並ぶ。奥は、シキナミカズヤ建築研究所SKALの事務所スペース。

中嶋:
大家さんともだいぶ仲良くなってきて、「外の看板もそろそろ変えようかな」とか、最初に僕らに聞いてくれたり。今後は、廊下になっている真ん中の通路ももうちょっとリノベーションしたり、そういうのがどんどん出来るといいなと。

小田桐:
そういうところは、建築家っていう社会的な信頼のある敷浪さんがいてくれるのがすごく大きいです。大家さんも信頼してくれているというか。アーティストの僕らだけだと、なかなかそういうことにはならない。

中嶋:
大家さんに「壁に穴開けてもいいですか?」とか電話したりすると、「敷浪先生がオッケーとおっしゃっていれば、何やってもよいです。」みたいな(笑)。やっぱり一級建築士ってすごいなって。

小田桐:
でも本屋さんは早くやりたいですね。ベビーカー連れや、子どもも多くて。商品も、子どもたちが自分で選べるものを早く揃えたいと思っています。

アート作品も、買った人にとっては日用品になる

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Q11.アーティストバイヤーコーナーについて教えてください

小田桐:
友人のアーティストが海外に長期滞在していたり、滞在制作に行った時に、その生活圏のスーパーやホームセンターなどで、現地のひとが普段使っている日用品を買って来てもらうという企画です。日本で売るために仕入れる業者と違うので、セレクトが面白いですね。

中嶋:
現地の町の背景もそうだし、アーティストの作家性がすごく出るんですよね。いまはアーティストの丹羽良徳くんと、狩野哲郎くんにセレクトしてもらったものを置いています。

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中嶋:
丹羽くんは数年前からオーストリアのウィーンに移住していて、一時帰国のタイミングで買って来てもらいました。その中のひとつに日焼けオイルがあります。オーストリアは日があまり当たらない地域なので、基本的に色白のひとが多く、色黒のひとは、バカンスにいく余裕がある富裕層と見られて、女性にモテるらしいんです。そういった背景もあって、日焼けオイルがよく売られているらしく。まぁうちで日焼けオイルを買う人はいないと思いますが(笑)。

アーティストバイヤーの商品は、実際に使うというよりも、テキスト(購入したひとには丹羽良徳によるテキストを印刷した包装紙に包んでくれる)と、その日用品込みの小作品みたいな感じでとらえてもらうと、楽しめると思います。

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小田桐:
こうやって人になにか頼むっていうのは、L PACK.っぽいやり方かなと思っています。日用品店って言っておきながら、比重的には「作品」に近い商品も多くて。まったく興味ない人は見てないと思うけど、店の中にあり続けることで、意識がそういう商品にいくようになるだろうというのはあって。いつもカフェラテとかを買いに来る近所の子ども連れのお客さんが、3、4回目に来た時に、急に箸置きだけ買いに来てくれたことがありました。作品を買うにはいかないですが、あ、ちょっと次のステージにいけたかなって。

中嶋:
逆に作品も、買った人にとっては日用品になると思っています。家で毎日見るものだし。お米を買いに来た人が、作品いいなと言って、作品を買って帰るみたいな状況が起こったらおもしろいなと。

Q12.「店」というのは、これまでのL PACK.の活動に比べてかなり長期的なプロジェクトです。今後続けていくにあたって考えていることは?

小田桐:
大学時代に二人で L PACK. を始めたとき、「L PACK.っていうのは、一生やろう。」と話していました。

中嶋:
どっちかが車椅子になって、どっちかが車椅子を押してる写真が最初にパッと浮かんで。それ絶対かっこいいなと。それだけで作品になるなって(笑)。

小田桐:
始まりの時点から、生きてるうちっていう時間設定があるので、その間に何が出来るかっていう感じなんです。店もその中のひとつというか。それに、自分たちでやり続けるっていうことにそんなに執着はなくて、始めた後は、次はどうやって人に託していくか、この状態を維持していくかっていうのが興味として出て来るから。

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中嶋:
まぁまだここは何にもないから、いろいろ出来そうな気がします。町が急激に変わったら、ちょっと違うなってなるかもしれないけど。

小田桐:
それでも少しずつ変わって来てますね。

中嶋:
近くにハーレー・ダヴィッドソンのお店が出来て、試乗ができたり(笑)。あとは、相模鉄道と日吉からの東急線が伸びて、ここから少し行ったところに新しく駅が出来るんです。横浜国立大学の前にも新駅(羽沢横浜国大駅)が出来て。それが出来たらまた町が変わるかもしれないですね。

L PACK. / エルパック
小田桐奨と中嶋哲矢によるユニット。
共に1984年生まれ、静岡文化芸術大学空間造形学科卒。アート、デザイン、建築、民藝などの思考や技術を横断しながら、最小限の道具と現地の素材を臨機応変に組み合わせた「コーヒーのある風景」をきっかけに、まちの要素の一部となることを目指す。2007年より活動スタート。主な活動に廃旅館をまちのシンボルにコンバージョンする「竜宮美術旅館」(横浜/2010-2012)や、みんなのアトリエ兼セカンドハウス「きたもとアトリエハウス」(埼玉/2012-2017)、ビジターによるビジターのためのスペース「VISITOR CENTER AND STANDCAFE」(名古屋/2013)などを展開。2018年より元・日用品市場にてこれからの日用品店「DAILY SUPPLY SSS」をオープン。また、各地のプロジェクトやレジデンスプログラム、エキシビションにも参加。http://www.lpack.jp
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