Say hi to the herbs🌿あのまちに住むハーブ #02 原宿キャットストリート編

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たとえばスクランブル交差点で知らない人たちの波の中を歩いていても、ただただ無心でその場を通行するだけ。けれどもし知っている人が前を通り過ぎたなら、たちまち顔がほころんで挨拶できる、「Hi !」👋

植物との関係性も似ているところがある。まちのなか、わたしたちは無意識のうちに街路樹や道の脇に生えている草木の前を、通りすぎる。小さな種が芽を出している、なんてことにも気がつかない。ではその植物のことを知っていたなら?どうだろう。

名前を知り、どんな存在なのかを知ると、対象が「ある」存在から、「いる」存在になるのではないだろうか。まちの植物を知ることは、まちに知り合いが増えるようなものなのだ。そんな、植物と友達になって歩く感覚を体現している人がいる。〈HERBSTAND〉の平野優太さん(以下、平野さん)だ。ハーブの定義を「食べられたり、染められたり、人にとって有用な植物」とする彼と共にまちを歩くと、あれもこれもハーブだ!ということに気がつく。気にも留めていなかった通り道が、行く先々で声をかけたくなる植物と出会う通りに変容してしまう。

ということで、本連載では平野さんと「あのまちに住むハーブ(食べられたり、染められたり、人にとって有用な植物)」を見つけに、まちを歩いた記録を綴っていく。第二弾は、原宿キャットストリート編。原宿で都市型農園やコンポストの実践などをしている中村元気さんをゲストに招き、3人でハーブを探索してみた。

「#01 狛江編」はこちら👀

Text+Edit:Sara Hosokawa
Illustration:Kanan Niisato

キャットストリートに驚くほどたくさんの種類のハーブが生えているという事実、知っている人はどれくらいいるのだろうか。私が特にびっくりしたのは、キャットストリートを歩いたとき〈PUMA STORE〉前などの花壇に小さなリンゴが実っていたこと。これは中村元気さんが育てているもので、彼はこのリンゴを使った原宿産のシードルを作って販売している。

当日は、〈SHIBUYA CAST.〉横のキャットストリートのちょうど始まりからスタートし、表参道に突き当たるまで探索。平野さん、中村さんとキャットストリートを歩くと、さまざまなハーブを発見しすぎてなかなか前に進めない。それほどまでに豊穣なこの通りでは、香りに特徴のあるものが多く見られた。カツラの落ち葉からはキャラメルのような香りが、生垣などで見かけるヨーロッパゴールドからはいちごミルクのような香りがした。鼻を通して感じる香り(オルソネーザル・アロマ)が面白いものだけでなく、食べたときに喉から鼻に抜ける香り(レトロネーザル・アロマ)がまるで餅のようなニュアンスを持っているものもあった。

キャットストリートは香り天国!この記事を読んだら、ぜひ自分でハーブ探しに行ってみてほしい。

〈patagonia〉前の花壇:ドクダミ

平野:ドクダミもそこらじゅうに生えているんですが、せっかくこんなにたくさんあるなら有効に使えるといいなと思っていて。中華料理ではドクダミの地下茎を肉と一緒に醤油やお酢で炒めたり、火鍋に入れて楽しむ地域もあったり、またベトナムではドクダミの仲間を薬草鍋に使ったりと、身近に取り入れられているようです。

中村:僕はドクダミの花を虫除けスプレーにして使ったことがあります。

平野:いいですね。ドクダミが花を咲かせる時期に実るヘビイチゴという植物があるんですが、このヘビイチゴとドクダミの花を一緒に焼酎漬けにすると、最強の虫除けができます。虫除けにもなるし、刺された後にも効く超特効薬です。花だけでなく全草効果があるので、ドクダミの葉を揉んで湿布みたいに当てておくと、毒消しにもなります。

ドクダミ
独特な匂いを持ち、コンクリートの割れ目からも生えてくるくらい強く、抜いても抜いても生えてくることから雑草扱いされることも多い植物だが、化学薬品のなかった昔は民間治療薬として重宝されてきた和のハーブのひとつ。花名の由来は、毒や傷みを抑える効果を持つことから「毒痛み」が転じたと言われる説と、葉の特有の匂いが毒ではないかといわれたことで「ドクダメ」と呼ばれるようになり、それが「ドクダミ」になったという説がある。

出典:“ドクダミとは?育て方・栽培方法|植物図鑑”. LOVEGREEN.

〈patagonia〉正面のマンション:マツ

平野:マツは超有用植物です。イメージがないかもしれないですが、マツはとても栄養価が高く、最近だとスムージーにして飲む人もいます。葉の部分には乳酸菌が含まれていて酵母になるので、パンやチーズを作るのにも使えます。また、砂糖をいれた水にマツを入れて、日陰などに置いておくと発酵します。そうすると「松葉サイダー」という炭酸水ができます。結構昔から作られているもので、使い道は無限です。

細川:意外な使い方ですね!食べたりもできるんですか?

平野:できますね。秋田の郷土料理でもあるのですが、非常食として赤松の樹皮の内側を粉状にしてお餅に練りこんだ松皮餅があります。江戸時代に飢饉の際に食べられ、兵糧攻めに備えて発明されたともいわれているようです。 また、マツの枝などからとった出汁は茶碗蒸しに使ったり、この間お茶漬けを作ったらものすごく美味しかったですよ。松ぼっくりもよく使われます。生活の中でよく見かけるのは茶色くて傘が開いたものだと思いますが、僕らは開く以前の青い状態の松ぼっくりを出荷しています。シロップ漬けにしておくと柔らかくなって、食感はドライのレーズンのような感じです。噛むと口の中で木の香りがふわっと広がるので、食材としてとても面白いですよ。

中村:マツは使える時期に偏りがあったりするんですか?

平野:常緑樹なので、葉はずっと青々としていて年中使えます。森の中だと、常緑樹が多いと光が他の植物に当たらなくなってしまうので定期的に剪定や枝打ちをします。そうやって収穫したものを乾燥してお茶を作ったりするんです。また、中国ではマツに関する有名な逸話があります。とある地域に井戸があって、その上にマツの木が生えていたらしいんです。そうすると、松の葉が井戸に落ちていく。それでできた天然の松葉水を飲んでいたそのまちの女性の肌がとても綺麗だったので、美容効果がある植物として知られていった、という話です。マツは一日話せてしまうくらい面白いハーブですね。

マツ
マツの仲間は、北半球の寒帯から亜熱帯に9種ほどが広く分布する。日本にはアカマツ(赤松)、リュウキュウマツ(琉球松)、ゴヨウマツ(五葉松)、ハイマツ(這松)、クロマツ(黒松)、チョウセンゴヨウ(朝鮮五葉)の6種の自生が見られる。

出典:“マツの仲間の基本情報”. みんなの趣味の園芸.

〈LUKES LOBSTER〉前の花壇:スイートアリッサム

平野:スイートアリッサムは、お花がすごく可愛いので人気のエディブルフラワー(食用花)です。

細川:味や香りはするんですか?

平野:少し食べてみましょうか。エディブルフラワーの中にも、「彩りに使われることが多い花(食べられないことはないが味や香りに特徴があるわけではない花)」と「香りや味がしっかりしていて、いち素材として美味しい花」があるのですが、スイートアリッサムは彩りも、香りや味もバランスがよく素晴らしいハーブです。

細川:確かに、味や香りはそこまで強くないですが、餅のような後味を感じます。

平野:本当ですね。食べ始めは全然味がしませんが、最後の方に餅っぽさがふわっと香りますね。

スイートアリッサム
小花が集まって咲き、ほんのりと甘い香りがある地中海沿岸原産の多年草。白、赤、ピンク、オレンジ、紫など様々な花色がある。似た植物の「アリッサム」は別物で、黄色い花しか咲かせない。また、スイートアリッサムはアブラナ科ニワナズナ属の植物であるのに対して、アリッサムはアレチナズナ属に分類される。

出典:
1)“スイートアリッサムの基本情報”. みんなの趣味の園芸.
2)“アリッサムの花言葉の意味・由来|花の特徴や種類・誕生花も紹介”. Hana Saku.

〈THE NORTH FACE kids〉横の個人邸:ブルーアイス

平野:これは個人的にとても好きなハーブで、ブルーアイスといいます。まるで何種かの香料を混ぜ合わせて出来上がった香水のようないい香りがします。元々は庭木やリースなどに使われる観賞用の植物なんですが、僕たちが食用として提案しはじめて、少しずつシェフやバーテンダーの方にも使ってもらえるようになりました。

細川:こんなに素敵な香りなのに、今まで着目されていなかったんですね。

平野:園芸用として売られていることがほとんどなので、育てている人でも香りがあるのを知らないこともよくあります。でも今では、この香りを利用してコンブチャや蒸留酒に使ったり、粉砕してお塩に混ぜたり、さまざまな活用方法が生まれてきています。

ブルーアイス
コニファー(園芸用に用いられるヒノキやマツなどの針葉樹の総称)の中でもブルーアイスはシルバーリーフと呼ばれる銀色を帯びた葉が美しく、人気がある。芽吹き始めのシルバーグリーンの色が特に美しく、次第に落ち着いた色に変化していく。葉に触れるとなんとも言えない爽やかな森の香りがする。

出典:“コニファー・ブルーアイスとは?育て方・栽培方法|植物図鑑”. LOVEGREEN.

〈THE ROASTERY by NOZY COFFEE〉前の花壇:オキザリス

平野:オキザリスはカタバミの仲間で、赤色のものや緑色のものなど、さまざまな種類があります。葉はクローバーに形が似ていますよね。料理の上に飾るのによく使われるんですが、特に美味しいのが、オクラみたいな形の実の部分。食べてみてください(*1)。

細川:酸っぱいですね、プチッとした食感で美味しい!

平野:そう、酸味があるんですよ。使ってる人はあまり見たことがないんですが、料理に使える方法はたくさんあると思うのでこれから提案していきたいと思っています。どこにでも生えていて、一般的には雑草として嫌がられてる子たちなんですが、使い方によっては可能性があるハーブです。

オキザリス
カタバミの仲間で800~850種ほど存在し、世界に広く分布する。クローバーと見た目が近いが、クローバーの葉は丸みがかった扇のような形をしているのに対し、カタバミはハート型の葉を持つ。クローバーは描かれるとき、ハートの葉で表現されることが多いため誤解されやすいのかもしれない。名はギリシア語で「酸性」を意味するオクシス(oxys)に由来し、葉や茎にシュウ酸を含み酸っぱいことに因んでいる。

出典:
1)“オキザリスの基本情報”. みんなの趣味の園芸.
2)“カタバミとクローバー、オキザリスの違いや見分け方は?”. 植物NAVI.
3)“オキザリスとは”. ヤサシイエンゲイ.

*1 身近な植物でも、例えばアジサイのように毒があるものも。知識なくむやみに口にすることはやめておいた方が良い(平野さんも今まで幾度となくお腹を壊しているとか)。また、公園や道に生える植物を許可なく採取することは法律や条例で禁止されている場合がある。少し摘んでみる、などは常識の範囲内で。

〈Le Ciel Blanc〉の生垣:カツラ

平野:この丸い葉はカツラです。秋に紅葉して葉を落とすと、その落ち葉が地面で発酵し、マルトールという香り成分を出します。それがなんと、キャラメルの香りがするんです。

中村:甘い香りということですか。秋になったら落ち葉を拾って使ってみたいです。

平野:掃除がてら採取できたら、地域の方にも喜ばれるし一石二鳥ですね。最近ではお酒に漬けたり、砂糖で煮出してシロップにしている人も見かけるので、試してみると楽しいと思います。

カツラ
丸やハートのようなかわいらしい形の葉が特徴の落葉樹。新緑の葉や秋の黄葉の美しさから、公園や並木道の街路樹としてもよく利用される。黄色い葉からは砂糖をこがしたカラメルのような香りがするため、「かづ(香出)」がカツラという名の元になったといわれている。

出典:
1)“カツラ(桂)とは?育て方・栽培方法|植物図鑑”. LOVEGREEN.
2)“カツラ”. ARBORETUM.

〈PUMA STORE〉前の花壇:タイム

平野:これはイブキジャコウソウですね。「伊吹山で見つかったジャコウソウ(タイム)」という意味です。西洋のタイムはツンとシャープな香りがするんですが、日本の固有種であるイブキジャコウソウは、甘みと優しい香りが特徴です。知り合いのジビエを扱っているシェフは「日本の鹿は山に自生しているイブキジャコウソウを食べているから、調理するときも西洋のタイムより日本のタイムの方が合う」と言っていました。

細川:日本の植物を食べている動物は日本のハーブで調理する。面白いですね。こちらの直立して生えているのもタイムですか?

平野:それは西洋原産のタイムです。いわゆるタイムときいて思い浮かべるような、シャープな香りがします。西洋のタイムが「コモンタイム」と呼ばれ、上に伸びるように生えるのに対し、日本のタイムは這うように生えるので「クリーピングタイム」と呼ばれていています。香りだけでなく、生え方でも識別できるんです。

タイム
シソ科のハーブ。種類が多く、立ち上がり上に伸びる立性のもの(コモンタイム)と、這うように生育する匍匐(ほふく)性のもの(クリーピングタイム)に分かれる。(*「creeping」とは、「這う」「絡み付く」という意味を持つ)一般的にタイムといわれているのはコモンタイムのこと(*「common」=「一般的な」「普通の」)。

出典:
1)“タイムとは?育て方・栽培方法|植物図鑑”. LOVEGREEN.
2)“[creeping]”. 英辞郎 on the WEB.
3)“コモンタイム”. 兵庫県立淡路景観園芸学校.

〈ワタナベウェディング東京〉横:ヨーロッパゴールドとゴールドクレストウィルマ

平野:コニファー(針葉樹の総称)はまちなかの花壇などでよく見かけると思います。コニファーの多くはいわゆる木の香りがするのですが、その中でも特徴のある香りがするヒノキ科のハーブを「ニオイヒバ」といいます。ニオイヒバにもいくつか種類があって、こちらはヨーロッパゴールド。いちごミルクのような甘い香りがします。コニファーはどれも見た目が似ているのですが、この香りがするのはヨーロッパゴールドだけで唯一無二です。

細川:別の軒先の花壇にはまた少し違う色のコニファーがいますね。

平野:こちらはゴールドクレストウィルマです。同じニオイヒバの一種ですが、香りは全然違って山椒のような香りがします。ヨーロッパゴールドもゴールドクレストウィルマも、コンブチャやお茶にしたり、蒸留してジンを作ったりできる超有用植物です。

ヨーロッパゴールド
北米原産のニオイヒバの一種で、その名のとおり、四季を通して葉の色が黄金色から緑色に変化してゆき、冬は黄金褐色、春は黄金色、夏は緑へと移り変わる。

出典:“ヨーロッパゴールド(コニファー)の育て方”. GOOD2 GARDEN.

ゴールドクレストウィルマ
コニファーの中でも最もポピュラーで、山椒に似た独特の香りと円錐形の葉で知られている。寒さに強く、日当たりと水はけの良い環境を好むが、高温多湿に弱いという特徴がある。最近ではクリスマスツリーに見立てて使われることも多い。

出典:“ゴールドクレストとは?育て方・栽培方法|植物図鑑”. LOVEGREEN.

表参道〈GYRE〉横:中村さんの花壇

中村:この花壇には、僕が仲間と育てているハーブが植わっています。

平野:ミント、ヤロー、ローズマリー、レモングラス、ミツバ、ノコギリソウ……たくさんの種類がありますね。ノコギリソウは、葉が若いときは柔らかく、いい青さを持っているのでフレンチなどで使われています。花は乾燥してお茶にしたり、エディブルフラワーとしても使えますね。

中村:オイスターリーフなど、枯れてしまったり育てるのが難しかったハーブもありました。

細川:ミントと一緒に花壇に植わっていることが原因だったりするのでしょうか。

平野:そうですね。ミントがなぜ他の植物を駆逐してしまうかというと、地下で根がどんどん広がって他の植物が根を張れなくなってしまうからです。また、ミントは生育スピードが早いので、他の植物が日陰になってしまって元気がなくなってしまう。だから、ミントはミントだけで植えてあげたほうがいいですね。

細川:こっちにはローリエも生えてますね。ポトフなどの料理でよく使います。

平野:一般的にはスーパーなどで乾燥したものをよく見かけると思いますが、フレッシュのローリエは一層香りが引き立っています。ミルクで煮出したアイスを〈青果ミコト屋〉で食べたことがあるのですが、とても美味しかったです。

細川:いま自主制作的なプロジェクトで、友人とジェラートを作っているんです。キャットストリートジェラート、作ってみたいですね。

ミント
シソ科ハッカ属の総称。さわやかな香りが魅力で、ペパーミントやスペアミントなどが古くから栽培され、広く親しまれている。種により精油成分が異なるために香りもさまざまで、チョコレートやオーデコロン、グレープフルーツ、バナナなど、意外な香りをもつミントもある。

出典:“ミント類の基本情報”. NHK出版 みんなの趣味の園芸.

ローリエ
葉は乾燥させて香料としてポトフやシチューなどの料理に使われ、月桂樹やローレルの名でよく知られている。ギリシャ神話にも登場し、古代ローマのオリンピックでは勝者の頭上に月桂樹の葉の冠が捧げられていたことでも有名。

出典:
1)“ゲッケイジュの基本情報”. NHK出版 みんなの趣味の園芸.
2)“ローリエ”. ハウス食品 Spice of Life.

PROFILE

平野優太/〈HERBSTAND〉代表
1992年生まれ、横浜出身。幼少期からスケートボードやサブカルチャーに魅了され、10代の頃にアパレルブランドを主宰。その後、かねてより興味のあった植物を学びにニュージーランドへ。有機農家を中心に訪畑し農業やハーブについて学ぶ。帰国後、山梨県の富士北麓に拠点を移し、ハーブの生産事業を主軸に商品開発、ハーブティーのブレンド考案、ハーブガーデンの監修などさまざまな活動を行う〈HERBSTAND〉の代表を務める。

PROFILE

中村元気
2014年に原宿のキャットストリートで地域コミュニティ〈CATs〉を始める。消費の中心地だからこそ、お金では手に入らない人間関係を作り、ゼロから価値を生み出すアクションを実験的に行う。2018年からは、ゴミ問題の根本解決を目指すために「循環型」のライフスタイル提案を行うゼロウェイストな社会を作っていくコミュニティ型の団体〈530(ゴミゼロ)〉を立ち上げた。余ったパンの耳を使ったビール「bread」の企画をはじめとした、アップサイクルプロダクトなどの企画に関わる。

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