MAD City People #03|空間デザイナー 西尾健史

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千葉県松戸市の松戸駅前で行われている、まちづくりプロジェクト「MAD City」。2010年のプロジェクト開始以来、半径500メートルのエリアの中で、150人以上のクリエイティブ層がショップやアトリエなど独自の活動を展開している。

そんなエリアで活動する人々を紹介する本企画。第3回目に登場するのは、空間デザイナーの西尾健史さん。アーティストや建築家との共同アトリエ「madlab(マッドラボ)」を拠点としながら、現在は都内に事務所を構え、活動のフィールドを広げている。自由な発想から生まれる空間とプロダクト、そこに込められた哲学について話を聞いた。

text:TOMOHIKO MASE
photo:HIROSHI HOSOKAWA
edit:AKIRA KUROKI

Profile
名前: 西尾健史(にしお たけし)
職業:空間デザイナー
年齢:34

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ーまずは簡単な自己紹介をお願いします。

空間デザイナーをしていて、住宅や住まいのことだったり、展示会や期間の短いポップアップショップなど、いろいろな空間をデザインさせていただいてます。また、空間のコンセプトに沿った什器などのプロダクトを自分で制作することもしています。

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ーそもそも「madlab(マッドラボ)」に入ったきっかけは?

松戸にあるアーティストインレジデンスPARADISE AIRの運営メンバーのひとり、森純平くんと話をしているうちに、「お互いにやっていることが近いから、一緒にアトリエを借りよう」という話になって。

それまで柏市内の建築事務所でずっと設計をやっていたんですが、2011年に東日本大震災が起こりました。その時、困った人がいるのに自分のできることが「図面を書くことだけ」ってすごい嫌だと思ったんですよ。それで、会社を辞めて個人で「DAYS.」として独立するタイミングで、制作のためのアトリエとして借りることにしました。madlabはもう5年くらい通ってます。

ただ、最近まで松戸に住んでいたんですけど、今年に入ってからは錦糸町に引っ越して、働き方を東京にシフトし始めています。

ー今日は台東区鳥越の事務所にお邪魔していますが、こちらに事務所を設けた理由は?

「markte」というドイツ雑貨のお店を手がけている方がこのビルのオーナーなんですけど、「みんなで一緒にこのビルに入らないか?」と誘われたんですね。僕も都内に事務所を設けて、ちょっと仕事のやり方を変えたいと思っていたんです。

松戸で得た、次の拠点へのステップ

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ーこのビルには、カフェ「T」や手製の革製品を展開する「トートーニー」など、さまざまなテナントが入っていますね。この部屋もカバンのデザイナーさんとシェアされていますし。「仕事のやり方を変えたい」というのは?

僕は自分で什器などの制作もするんですけど、やはりやりたいのは空間デザイン。なので、デザインを出来る場所を東京に確保しつつ、立体物の制作時にはスペースの広いmadlabに行く、というスタイルでやっています。

最初、松戸には「東京に近いけど、ローカルな仕事ができるかな」と思って住み始めたんです。ちょうどMADcityが地方の改装可能物件などを紹介する「脱東京不動産」を始めて、クリエイティブ集団・grafの豊嶋秀樹さんや、高円寺を拠点に様々な店舗をコミュニティ的に運営している「素人の乱」の松本哉さんといったアートやデザインの人が集まっていて、何か面白いことが起きていると思ったので。松戸はベッドタウンなので、自分のライフワークとしてもうちょっと暮らし方にコミットしたことが出来ないかなって。

ただ、最近は九州など、よりローカルな仕事が増えてきたこともあって、東京での生活と地方での仕事を並行してやっている状態になってしまって…。なので、中途半端なのはやめて、僕自身、次のステップに行こうかな、と。

ーローカルな仕事というと?

ワークショップをやったり、地元のお店や宿の内装デザインなどです。松戸や東京で知り合った人たちが「次の拠点として地方で新しい場所を作る」となった時に声をかけてもらうことが多いです。そういった仕事では、“町への開き方”を意識して作っています。そういう面では、松戸の延長というか、松戸で得たことは大きいですね。

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ーMAD cityではどういったプロジェクトをされていたんですか?

例えば、京成線の五香駅にあるショッピングモールの中にコミュニティスペースを作るというプロジェクトでは、空間や什器をデザインしました。

あとは、地域でワークショップを行って、本棚や椅子の作り方を地元の方に教えたりもしてましたね。ただ完成品を作るんじゃなくて、ホームセンターに行って木材カットの指示の仕方やビスの場所を教えたり、ワークショップが終わった後にもDIYを趣味にできるよう、意識して教えていました。

ーここからは実際に西尾さんがデザインを担当されたお仕事を見ていきながら、西尾さんのデザイン観について話を伺えればと思います。

最近やってるプロダクトですと、例えばこのマガジンラック。普段は壁掛けですが開けたらミラーが入っていて、その日の気分で鏡台としても使えます。ほかにも、普段はトレーとして使って、ラックとしても使える家具なんかも作っています。

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ーどういったコンセプトで制作されたんですか?

すごく軽い家具を作りたかったんです。軽いっていうのは、重量だけじゃなくて、使う人の気分的にも。例えば、ファッションだと「明日はどの服を着よう」となるけれど、家具の場合は基本的にずっと固定して置かれたモノになってしまう。

そんな時、その日の気分で色や佇まいを変えられる家具がひとつでもあると、生活の中で気持ちが楽になる部分があるのかな、と。そういった、使う人の気持ちに沿った家具を作りたかったんです。家具が軽くなれば、引っ越しも億劫じゃなくなったりするかもしれません。

ー1度設置した家具をその日の気分で変えるというのは、考えてもみませんでした。

ほかにも、今作っているプロダクトはこの板なんですけど…。設置した棚板にこの板のスリットを合わせてはめていくと、棚が無限に増えていきます。つまり、これは棚を一段だけ買うシステムで、あとはモジュールを組み合わせることで自分オリジナルの棚が作れるんです。

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この板でも、色や素材、生産地が違うものをいっぱい作りたいんです。板自体はすごくシンプルな形なのでどこの国でも生産可能ですが、場所によって厚みや精度も変わってくるでしょう。となると、台湾でしか売ってない板があったりする。そういった板を集めて、地球地図を描くみたいにどんどん棚を増やしていければな、と。

つまり、完成品としての家具を買うのではなくて、自分が欲しい時に段を増やしたり、旅先でのご当地品として買える家具が出来たらいいな、と考えています。

(POP 2017)
POP 2017

ーおもしろいですね。これらはすでに販売されているんですか?

こうやって作品のお話をした上でオーダーがあれば作りますけど、一般的な販売はしていません。というのも、普通の家具と違って、ものによっては不安定な部分をあえて残している家具もあります。なので、プロダクトの使い方だったり、そこに込めたストーリーを知らない人に売るということは現時点ではしていません。

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