仲間が辞めない「生態系」が新事業をつくる。R不動産が社員を雇わないわけ(後編)

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「ファッキンな理屈」と「素晴らしい物語」が出会う場所

寺井 ちなみに、最後に聞いてみたいんですが、林さん個人が今ここおもしろいと思っている町ってありますか?

 あ、その質問、来ましたね。それはすごく答えるのが難しくて……。自分は2年ごとに引っ越すので東京の中でも色んな街に住んでみました、で、どこも好きな町でした、っていう感じがあります。2拠点生活をガッツリしているわけでもない。対してリスクとってないんですよ……。

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寺井 いやいや、住環境にリスクテイクする必要はないと思いますよ(笑)。

 まあそうなんですけどね(笑)。あ、そういえば新島の話をしましょうかね。

寺井 あ、ビーチラウンジの「WAX」の、新島ですね。新島では宿を運営していたんですよね?

 はい、縁があって遊びにいったら気にいって、saroという宿とカフェをつくりました。今は二拠点シェアみたいな場所をやって時々行ってますが、自分にとっては第二の居場所といえます。都会にない環境があって、いい仲間がいて、大好きな場所。なんていうか、ここが今おもしろい、というより、自分が愛着がある街、という話の方が意味があるかなと思ってます。

WAXというのは毎年夏に1ヶ月オープンするビーチラウンジで、僕の友人と地元の仲間たちが14年間やってたんですが、WAXとそこに関わる人たちとの出会いはいいものでしたねえ。

寺井 気になりますね。どんな人たちとの出会いがあったんですか?

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 話すとほんとキリがないんだけど、例えば地元で土木の仕事とかをしつつ外からきたサーファーと喧嘩したりしていたような、ある意味くすぶってた若者たちが、「WAX」をやって島外の人を迎え入れて喜ばせるという立場になったことで、自分たちが主役として表現したり場をつくることを通じて、本当に気持ちのいい青年に成長していったっていうね。

僕もそんな彼らを見ながら場所をつくろうと思ったし、そうした動きから刺激を受けた島の女性が、自分で素敵なホステルを開いたり、いろんな波及が生まれました。WAXの初期メンバーたちが組んだナムレというバンドなんてもう最高で、テクは大したことないけど、その島でしか生まれ得ない最高のバイブスがあるんですよ。で、そのメンバーの一人は島に住み始めたときはちょっとふてくされて将来のことなんて考えていなかったのに、仲間たちの日々を映像として撮っているうちに志が芽生えて、プロの映像ディレクターになっていった。

寺井 ひとつの場所から、様々な人たちの人生が交差していったんですね。

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 僕は僕で、新島の持続する未来みたいな話を考えて役場に提案したりっていう真面目なこともしましたけど、なんていうか、僕なんかが頭で組み立てたファッキンな理屈なんて、彼らが発していた人としての輝きに比べたら全然取るにたらないと思ったりするわけですよ。

ただ、世の中の課題全てがヒューマンな思いだけで解けるわけではないので、ファッキンな理屈も必要で、両方が支えあうんだと思うんです。僕は理屈とかデザインを意識高く語るスカした人間にはなりたくないけど、スキルとして得意なのはそっち側。だからこそ、人の心にしみる物語を体現しながらある意味フツウに生きてる人々に、いつも憧れと信頼を持ち続けてるんです。

ちょっと語りすぎましたね……。好きな町の話に戻ると、おしゃれなコーヒーショップがあるのもいいし、人の顔が見える町もいい。でもそれ以上に、場所と人との結びつきから生まれた物語のようなものに僕はものすごく意味を感じます。それはきっとどこの街にもある。そういうものってどう生まれていくのだろう、どうしたら失われないんだろう、と今日もルノアールでつらつら考えているというわけです(笑)。

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【編集部より】
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