シューズラッククロニクル #03|島田悠紀(古着屋店主)

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新品の靴を買ったことがないから、自分の靴のサイズを知らなかった

シューズラックから一足ずつ取り出していくと、あっという間に玄関が埋まってしまった。
シューズラックから一足ずつ取り出していくと、あっという間に玄関が埋まってしまった。

ー結構履き潰した感のあるものも多いですが、捨てることはないんですか?
捨てるのは本当に機能しないやつくらいじゃないかな。ソールが全部剥がれちゃってとか、履くことが単純にできなければ。でも、それまでは履くかもしれない。あとまだ実家にも結構あるんですよね(笑)。

ー靴箱があまりないですが、靴箱は捨てちゃうんですか?
というより、古着で買うからもともとないんです。昔から新品の靴を自分で買ったことがなくて。恥ずかしい話、中学生くらいからフリマとか行って買ってたから、高校生のときとかも自分の靴のサイズを知らなかった。履いてみて合う合わないの話だけだったから(笑)。

1461Z(Dr.Martin)
1461Z(Dr.Martin)

これもよく履いているやつです。雨の日はいつもマーチンを履いてます。スリーホールがすごい好きで。革だから濡れなくて済むし、気使わなくていいし、履きなれるとスニーカーよりも履きやすいんですよね。

JACK PURCELL(CONVERSE)
JACK PURCELL(CONVERSE)

これは90年代のジャックパーセル。これも大切にしているやつで、勿体なくてたまにしか履かない。綺麗な格好するときとか。買ったのは原宿にある「キンセラ」っていう古着屋さんです。

でも改めてこうやって見ると全部一応履いてるね。コンバースの気分のときはずっとコンバース履いてるし。このコンバースのALL STARは80年代かな。中でわかるんだけど、内側の「converse」が四角で囲まれているのが80年代で、つま先の部分が浅いんです。

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90年代のものは、現行とそこまで変わらないと思うな、ソールもそんなに厚くないし。その前の70年代は、もっと重くて、ソールも分厚いし、作りが全然良いんです。大量生産ということを感じさせないような。

さすがに70年代のは持ってないですけどね。オリジナルで状態の良いものは10万くらいします。そんなの買っても履かないよね(笑)。

ーそういった靴の知識はどうやって学ばれたんですか?
22歳くらいで古着屋の「BANK(三軒茶屋)」、「 NICO(吉祥寺)」(BANK と NICOは姉妹店)で働き始めてからですね。お店の人に教わったり、自分で調べたり。やっぱり働いていると、リーバイスの517がどうだとか、そういうのと一緒で、周りの環境とかで自然と入ってきます。

「古着の町」下北沢の端っこから

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ー下北沢を選んだ理由は?
ずっと働いていた三軒茶屋からある程度近い距離で、お客さんも来やすいところだったので。下北の町も好きだったし。でも、何よりあの物件(現在のFP Mart)があったからですね。

下北沢以外の場所も見ていたんですが、全然しっくり来なくて。あの物件をネットで見つけた時は、「ここやばい」と思って、次の日見に行って、その場で契約しました。

それが、8月30日で、8月31日までBANKで働いて、9月1日から契約して、オープンしたのが9月16日。2週間でっていうドタバタでした。什器と商品は用意してあって、あとは場所が見つかればっていう状態だったので。

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ーこの6年で、下北沢の町にどういう変化を感じますか?
お店にいるとあんまり変わっている感じはしないですね。FILMがある場所は、普通に下北沢に買い物行こうって来た人からすると、かなり駅から遠いというか、場所的に下北沢って認識されるギリギリの地点じゃないかなと思います。

パン屋の「KAISO」、コーヒー専門店「COFFEA EXLIBRIS」、「ヒッコリー」とか、FILMの周りにある自分の行動範囲がそんなに変わってないから、それほど変化を感じないけど、たまに下北沢をふらっとまわるときは、「古着屋増え過ぎだな」って(笑)。

ー古着屋さんが増え過ぎている?
FILMをオープンして2年くらいは、本当にどんどん下北沢に古着屋ができてて、「もうちょっとしたらどんどん減ってくんだろうな」と思ってたけど、6年間ずっと増えてる(笑)。

三日くらい前に聞いた話だけど、いま下北沢で不動産を探している古着屋をやりたいひと、不動産屋にストップさせられてるらしいんです。下北沢に古着屋が増え過ぎて、町内会が不動産屋に他を入れてくれって言っているそうで。

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ーなぜ下北沢に古着屋が集まるんでしょうか?
たぶん下北沢は古着がちゃんと動いてくれるっていうことを聞くんだと思う。古着を買いに行こうっていう人が集まってくるから、流れで他の古着屋まわる人もいて。うちは場所柄その流れには関係ないですが。

ー古着屋がこれだけ増えるということは、ある程度のノウハウさえ掴めれば、若い人でもやっていけるものなんでしょうか?
ちょっと教えてもらえば、いまはたぶん出来ることなんだと思います。買付け自体も。自分が初めて買付けに行った時は、本当にいろんな町の地図を買って書き込んでやってたんですが、いまはGoogle MAPで、スリフトって打てば全部お店も出ちゃうから。あとは運転が出来て、その子の感性でものが選べるんであれば。

自分はインスタグラムやらないけど、SNSとか、通販だけで古着を売って生計立ててるひともいっぱいいるみたいですからね。

ーFILMでは通販はやらないんですか?
通販はやってなくて、基本はお断りしています。やっぱりお店に来て欲しいから。お店に来てくれるひとを優先したいんです。

ー今後の展望はありますか?
展望は…、現状維持と、おもしろいこと。これから「FP Mart」でいろいろとイベントを企画していくのも楽しみです。

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島田悠紀(しまだゆうき)
1983年、東京都国立市生まれ。2012年9月、東京・世田谷区下北沢に古着屋「FILM」をオープン。2017年8月には、幡ヶ谷にある古着屋「PALETOWN」との期間限定ショップ「FP Mart」をオープンした。

http://film-web.tumblr.com

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