転写民芸

デジタルとフィジカルの捻れが生み出す作家性|たかくらかずきインタビュー

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有田焼のルーツから発想した十二支モチーフのティーポット

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──では、作品の話を聞いていきたいと思います。まず、どういう基準で型を選んだのでしょうか?

実は、この型を選ぶ前に気になったのが、十二支の小物入れでした。幸楽窯の展示コーナーで展示されていたものです。十二支の動物たちを模した器で、縁起物として作っているそうなんです。古くから作られているものをモチーフに、幸楽窯や有田焼の歴史を踏まえた作品を作りたかったんですね。本当は12種類作らせてくれと言ったんだけど、「作りすぎだよ」と言われちゃって(笑)。

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そうなった時に、じゃあそれとは別に歴史上で重要なものはありますかと聞いたところ、このティーポットとカップのシリーズを教えてもらいました。西洋のカルチャーを取り入れた、オーソドックスな紅茶のためのシリーズを有田焼で作るのが昔から人気だった、と。そこで、このポットの型に十二支を描こうと考えたんです。

──描かれているのは十二支だったんですね。

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そうです。干支の小物入れシリーズと、紅茶道具のシリーズを合体させました。干支は縁起物なのでグッズにした時に誰も嫌がらないだろうし、干支の器を作ってきた窯元だから、干支という和風のモチーフと、ポットという洋風のモチーフを組み合わせたらおもしろいかな、と。

その意味で、実際に現地に滞在して、幸楽窯の作品や技術を見られたことが着想源になってます。僕の場合、特に古い時代の制作物が参考になりました。

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──転写であることも考慮してデザインされた図柄は、どのような工夫をしましたか?

僕だったら絶対に貼れないものを目指しました(笑)。「職人さんだったらギリ貼れるのかな!?」くらいのデザイン。何枚かのデータを作って、真ん中の三角形を中心に、上下左右に十二支を配置しました。表と裏で動物のキャラクターも違っています。あと、ドットの網点がうまく出るか不安だったんですが、細かいところまでバッチリ出ましたね。

十二支のラフスケッチ
十二支のラフスケッチ
当初は宝船をイメージしていたそう
当初は宝船をイメージしていたそう

なんとなくデジタルとわかるような表現にしたかったんです。だから、けっこう不思議な図柄になったと思います。手書きの絵付けではこんなカクカクとしたドットは表現できない。でも絵付けと見紛うような発色になっている。それがいいバランスになったんじゃないでしょうか。

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──完成した実物を見てみてどうですか?

とても気に入っています。パーツのレイアウトは、かなりの部分を幸楽窯さんにお願いしました。「分割して横並びにして、いい感じに貼ってください」とパーツごとに提出しましたから。もちろん、写真で合成した完成イメージはお渡ししてますが、クオリティの高さに驚きました。

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作者の死後も残る「墓標」としての作品のあり方

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──今後この「転写民芸」は様々な形で販売されていきます。デジタル環境で制作するアーティストにとって、作品をモノとして売ることはどのように感じていますか?

僕は、単純にモノを売るというより、「残す」という感覚が強いですね。年々「デジタルは残らないのではないか」という不安が増してるからです。たとえば音楽や映画が顕著ですが、サブスクリプションのサービスに頼って、表現の楽しみ方が「購入」ではなく「配信」中心になると、そのサービスがストップしたり契約が切れたら、見れなくなったり聞けなくなったりしますよね。それに対して人々が不安を抱かないということが、明らかになりつつあると思うんです。

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作品を所有しないことがベースになってきた時に、作品との関わりが、ただの「出会い」になってしまった。世の中全体がシアター化しているというか、作品自体が出会いのドラマになってるんじゃないでしょうか。そうなった時に墓標を立てておかないと、「死んだら何も残らないじゃん」と思うんです。

──デジタルにとどまらず、形のあるモノとして保存することが重要である、と。

そうです。その上で、資本主義という制度の中だと、たまたまモノとして流通しやすいのが「売る」という形態に過ぎません。タダであげるより大事にされるし、金銭的な価値があるからこそ長く残る。だから、売っていくのには大賛成です。

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いつの時代まで残るかわかりませんが、そもそも陶器は非常に長く残るモノですよね。残るモノとしてすごく優秀なんです。だって古墳から出てくるんですから。データはもちろん、絵画よりも残るし、しかも日常的に使われることで、より大切にされます。美術をやっている人が陶芸にたどり着く気持ちがわかりますね。

──使うという点で言えば、陶器は庶民的な民具ですもんね

だから使ってもらいたいし、もし壊れちゃってもいいんです。それが燃えないゴミとして埋め立てられ、地層に残り、1000年後にこの器の破片が出てくるかもしれないから。

──今後、たかくらさんが陶芸でやってみたいことはありますか?

手で触れるのは何より楽しいですね。手びねりや絵付けもやってみたい。手びねりにあえて雑な転写をしてみたり(笑)。手びねりと型、絵付けと転写といった分断を飛び越えて、一緒にできたらおもしろいかもしれないですね。

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PROFILE
たかくらかずき / Kazuki Takakura

イラストレーター/アニメーション作家
1987生まれ。ピクセルアートとデジタル表示を駆使した作風で、イラスト、アニメーション、ゲーム、VR、アートディレクション、舞台美術など多岐にわたって手がける。近年のアニメーションワークスに、NHK教育テレビ「シャキーン!」「Eうた♪ココロの大冒険」「マリーの知っとこ!ジャポン」「まちスコープ」、劇場映画「WE ARE LITTLE ZOMBIES」、PARCOポイントCM、日本科学未来館ジオコスモス「未来の地層」など。

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