松戸のまちづくりと場づくりを考えた!「地域再生の失敗学」を題材に、松戸を面白いまちにするアイデアトークイベントを開催(前編)

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この記事はmadcity.jpからの転載記事です。元の記事はこちら

text:Taku Funahashi

これまでの地域再生施策の失敗から学び、将来を考える

  • 「活性化か消滅か」ではない選択肢を
  • ゆるキャラとB級グルメは無駄
  • ここにしかない魅力を徹底的に磨け!
  • 「人口減」前提のプランを立てよ

こちら、今年4月に刊行された新書「地域再生の失敗学」の帯に書かれた宣伝文句です。どれも現状の地域再生施策に対する痛烈な問題提起をしています。ゆるキャラとB級グルメっていうと、地域再生や地域活性化の定番に聞こえますが、無駄!と指摘。全国の自治体では定住人口を増やすことを前提とした施策が多い中、「人口減」前提のプランを立てよと、こちらも将来を見据えた現実的な提案をしています。そしてタイトルに銘打たれているのは「失敗学」。失敗は成功の母と言われるように、失敗から学び、将来を考えるという、なんとも真っ正直な一冊です。

これまでの国や自治体主体の振興策の失敗から学び、民間主導で地域経済に再び活力と成長を取り戻す−失敗から学び、将来を考えるという観点から、本書のタイトルは『地域再生の失敗学』としました。

地域再生の失敗学(光文社新書)「はじめに 飯田泰之」より

「地域再生の失敗学」をテーマにアイデアトークイベントを開催

「地域再生の失敗学」はAmazonの地域開発カテゴリーで、ベストセラー1位を獲得するほどの人気ぶりで注目を集めています。
「地域再生の失敗学」はAmazonの地域開発カテゴリーで、ベストセラー1位を獲得(2016年6月27日現在)するほどの人気ぶりで注目を集めています。

そんな「地域再生の失敗学」をテーマに6月12日(日)、MAD CityのイベントスペースFANCLUBにて、MAD Cityプロボノチーム主催によるアイデアトークイベントが開催されました。当初、参加者は登壇者の5名のみ、と覚悟していましたが、結果的に20名近くの方が参加してくださり、松戸のまちづくりや場づくりの現状や課題の共有、アイデア出しなど、参加者を交え活発な議論がされました。参加者に参加動機を聞いてみたところ、「地域再生の失敗学」を読んで誰かと語りたいというよりも、「松戸のまちづくりについて勉強や議論がしたい」、「MAD Cityの活動に興味があって」といった声が多かったです。

MAD Cityプロボノチームと株式会社まちづクリエイティブ代表取締役の寺井が登壇。前半は「地域再生の失敗学」各章の要約とディスカッションを行いました。
MAD Cityプロボノチーム株式会社まちづクリエイティブ代表取締役の寺井が登壇。前半は「地域再生の失敗学」各章の要約とディスカッションを行いました。

地域全体を一つの会社として見立てる

前半は「地域再生の失敗学」全5章の内、1章ずつを5名の登壇者でそれぞれ要約&ディスカッションを行いました。筆者は第1章「経営から見た『正しい地域再生』」(著者はエリア・イノベーション・アライアンス代表の木下斉さん)を担当したのですが、主に3つのポイントが印象に残りました。まずは、「地域全体を一つの会社として見立てる(まちを一つの会社に見立てて経営する)」という発想です。地域再生の事業に取り組む上で仕入れなどかけたお金以上に、地域に収入などといった形でお金が戻ってきているのか、そういった地域単位・まち単位の収支思考が地域再生にはまずもって大事だなと感じます。

たとえば原材料は地元産であればいうことはないですが、どうしても地元だけでは足りなくて、地域外から仕入れたとします。それでも、その原材料で作った商品を地元客ではなく外から来る顧客に対して販売するのであれば、仕入れに外貨を使っていても収入で外貨を獲得でき、仕入れと売上の差額分は地元に残る。だから地元で作付できないような原材料も多少は仕入れてもいいのではないか、とかそういう議論がないんですよね。

地域再生の失敗学(光文社新書)「第1章 経営から見た『正しい地域再生』 木下斉」より

「地域再生の失敗学」の著者・飯田泰之さんと”若き老害”常見陽平さんとの対談イベントの様子をまとめた記事はこちら。飯田さんは「地域経済の活性化なくして、日本経済の復活はない」と語ります。
「地域再生の失敗学」の著者・飯田泰之さんと”若き老害”常見陽平さんとの対談イベントの様子をまとめた記事はこちら。飯田さんは「地域経済の活性化なくして、日本経済の復活はない」と語ります。(画像引用元)

シャッター商店街の活性化が難しいのは「そもそも困っていない」から

次は、シャッターを閉めている商店街の空き店舗の問題についてです。そもそも商店街はモノが無い、人が移動できない時代は、生活圏内で適切かつ安定的にモノを供給してくれる存在として価値がありました。しかし、モノが世の中に溢れ、人の移動が自由になった現代、伝統的な商店街の役割は終わりにつつあります。シャッターを閉めた空き店舗の存在がそうした時代の変化を象徴しているようにも見えます。しかし、空き店舗は放置され、いつまでたっても新しい業態・業種の店舗に生まれ変わっていないという状況が商店街の魅力低下や地域経済の停滞につながっています。

普通に考えて、空き店舗になっている状態では、商店主にとっては商売で得られる収入もゼロ、不動産オーナーにとっても家賃収入はゼロと、早く商売を再開させたり、テナントを入れたりするはずですが、実際はそうなっていないケースが多く見られます。つまり、商店街の店舗は商店主と不動産オーナーがかぶっているケースも多く、例えば複数のマンションを保有していたり、駐車場経営をしていたり、別の場所で店舗を出店していたりと、空き店舗になっていてもそもそも「困っていない」という理由があります。ここらへんのことについてはこちらの記事でもまとめていますので、ご覧いただければ。

シャッター商店街の敵は”豊かさ”!?木下さんのブログでも指摘されています。
シャッター商店街の敵は”豊かさ”!?木下斉さんのブログでも指摘されています。(画像引用元)

行政は支援より緩和を

最後は行政による地域再生施策についてです。ありがちな施策として、地域で業績が落ちている企業にたくさん補助金を入れて設備投資支援をしようなんてのがありますが、こうした支援は企業にとって過剰投資になったり、長い目で見れば金食い虫体質になる恐れが生じるなど、本来の経済活動を阻害しがちになってしまいます。「必要なのは『支援』ではない、仕事をしたい人が仕事をできるようにするのがもっとも簡単で成果も出やすい」と、木下斉さんとの対談の中で飯田泰之さんもおっしゃいます。つまり、行政の役割は無闇に補助金を出すことではなく、できないことをできるようにする「緩和」が必要なのです。

まさにそうなんですよね。できないことをできるようにしてくれれば、そこに市場が発生しますので。僕らの場合もそうです。使えない放置された公共施設を貸し出してくれたり、道路を使わせてくれたり、公園で事業をさせてもらえたり、古い建物のリノベーションの許可を出してくれたりするのが、確実に効果的です。実際にそういう取り組みで地域が変わっていっている事例がどんどん生まれています。

地域再生の失敗学(光文社新書)「第1章 経営から見た『正しい地域再生』 木下斉」より

アメリカ・ニューヨークのマンハッタンの公園「マディソン・スクエア・パーク」には、ニューヨーク市が公園整備のために公園の一角の営業権を売却し、「シェイク・シャック」というハンバーガー店が出店しています。ニューヨーク市はその営業権売却によって得られた収入で公園の維持管理を賄うなどしています。
アメリカ・ニューヨークのマンハッタンの公園「マディソン・スクエア・パーク」には、ニューヨーク市が公園整備のために公園の一角の営業権を売却し、「シェイク・シャック」というハンバーガー店が出店しています。ニューヨーク市はその営業権売却によって得られた収入で公園の維持管理を賄うなどしています。あくまでも民間は稼ぐことに徹し、行政もその意識を理解しつつ稼げる民間に任せて、その収入で行政は公共サービスの効率化・改善に徹するという、あるべき公民連携の姿だと思います。(画像引用元)

地域再生やまちづくりに興味のある方は必読です

2章〜5章についてもそれぞれ、これまでの地域再生施策の問題点を指摘し、今後の進むべき方向性を示しています。詳しくはぜひ買って読んでみてください。また、書評もたくさんあるので、参考になると思います。

2016-06-08 【読書感想】地域再生の失敗学
『地域再生の失敗学』 再生とは平均所得の向上
『地域再生の失敗学』 ゆるキャラ・B級グルメ・ふるさと納税ではなぜダメなのか?
次回の記事では、いよいよイベント後半に行われた参加者全員を交えた、フィッシュボウル方式によるアイデアトークの模様をお伝えします!ぜひ引き続きご覧ください。

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