Belong to ME #03|イラストレーター 雪下まゆ

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企業や組織に所属せず、活動する人の数が増えている。テクノロジーの発展や価値観の多様化など、様々な理由が可能にしたこの「可能性」はしかし、「自由に稼げる」点ばかりが強調されていないか。現代における個人の持つ“強さ”とは、果たしてその1点で語れるようなものなのか?

本連載では、組織に所属せず、軽やかに領域を横断して活動する個人をマージナルな存在として位置づけ、今の働き方に至った経緯と現在の活動を伺っていく。インタビューは、その人が日頃活動の拠点としている場所で行う。

Vol.3に登場するのは、イラストレーターの雪下まゆさん。この春、多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業し、フリーのイラストレーターとして活動を続けていく彼女は、これまでランジェリーブランド「feast」にイラストを提供したりシンガーソングライター国府達矢さんのオリジナルアルバム「ロックブッダ」のアートワークを手がけるなど、着実に実績を積み重ねてきた。

フリーランスとして新たな一歩を踏み出した彼女に、個人で働いていくことの決意や創作の源泉について、話を聞いた。

text:Michi SUGAWARA
photo:Yutaro YAMAGUCHI
Edit:Shun TAKEDA

SNS上の評価だけでなく、ちゃんと現実で仕事をしたい

Q1.あなたの肩書は?

雪下まゆと言います。この間まで多摩美術大学に通っていましたが、先日卒業して、今はフリーランスのイラストレーターとして活動しています。

Q2.今の肩書を使うようになったきっかけは?

大学1年生の時に、インターネットで自分の作品を発表し始めました。そうしたら、ランジェリーブランド「feast」を手がけるハヤカワ五味さんが私の絵を見つけてくださって、ラフォーレでポップアップショップをやるという時にイラストを使っていただけることになったんです。仕事としてやらせていただいたのは、それが一番最初ですね。

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Q3.もともとイラストレーター志望だった?

小さい時からずっと絵を描き続けてたので、絶対に絵を描く職業にはなるんだろうな、と思っていました。イラストレーターという職業を意識し始めたのは、大学に入ってからです。ネットに絵を上げ始めたのも、「仕事が欲しい」というよりは「もっと多くの人に絵を見てもらえるきっかけになれば」という気持ちで、なんとなく始めました。

国府達矢「ロックブッダ」アートワーク
国府達矢「ロックブッダ」アートワーク

Q4.組織に属さないことに不安はない?

「大学生」っていう肩書がなくなって、社会に放り出されるのは普通に不安ですね(笑)。

友達と一緒に一社だけ応募したことがあって、企業の担当者が「私の名前」を検索して、今までに手がけた作品を見てもらえるっていう入社試験なんですけど。それで選考も進んでいったんですけど、最終的に落ちちゃって。「もういいや。向いてないわ」って思って、就職活動は止めました。

もし入社したら、絵を描きつつ、会社ではデザインの仕事だったり、企画に携わるようなことをやりたいと思ってました。でも、就職活動を止めて、その時に「マジでイラストレーターとして絵で食べていこう」と、自分の中で明確に区切りがついた感じです。

一応、イラストレーターの事務所とかも調べたんですけど、そうなると「ソーシャルゲーム系のイラストを担当」みたいなのが多いんですよ。私はそういう絵は描かないので、一旦は数年フリーでやっていくのもいいのかなって。それで、別の選択肢が増えたら、その時はその時で考えてみようと思ってます。

Q5.創作で行き詰まることはある?

私は描き込みが好きで写実的な絵が多いんですけど、最近は「写実である意味」みたいなのを考えながら描いてますね。基本的にデジタル環境で絵を描くんですが、そうやって写実の絵を描いて、人から「写真みたい」って言われても別に嬉しくないんですよ。だから、ドローイングっぽいイラストとかゆるい絵を描ける人にすごい憧れていて。

そういった絵を描けない自分は、自分のアイディアと写実的な絵とかの組み合わせを、もうちょっと考えて工夫しながらやっていかないといけないなって思います。

動くイラストをTwitterとかに投稿しているのも、みんながTwitterを流し見してる中で、「こっちを見てる絵が瞬きしたら、人の目を引けるかな」と思ってやってみたりしてます。

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Twitterきっかけで仕事とかもいただけたりしたんですけど、あまりTwitterを意識し過ぎたくはないです。フォロワーの数とかを気にして、SNS作家みたいになるのはダサいかなって。それよりも、ちゃんと現実で仕事したい、って気持ちがあります。

Q6.SNSの影響などは感じる?

やっぱり絵を見た人の反応とかが数字として目に見えて、それが良いなと思うんですけど、100%良いかっていうとわかりません。描いてアップロードして、すぐに反応が見れるっていうのも、ちょっと合理的すぎる感じもして。じっくりと描きためて、個展でちゃんと展示するっていうやり方もあると思います。ただ、反応が目に見えることは創作意欲が湧くきっかけにはなりますね。

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