Belong to ME #03|イラストレーター 雪下まゆ

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可愛いものよりも、自分の好きなものを描きたい

Q7.絵を描くのは自分のため? それとも、SNSなどで見てくれる他人のため?

大学1年生くらいの時はなんとなく描きやすいから女の子を絵を描いていて、反応も多くなってきたりそれで仕事も来たりしたので、女の子の絵をどんどん描くようになっていきました。ただ、私はあまり可愛いものが好きじゃないので、もっと自分の趣味に近いようなオジさんとか男の人の絵を描きたい、とも思っています。

最近は、自分の好きな絵で仕事をしていきたいと思っているので、自分の好きなものを優先して描こうって気持ちになってます。だから、男の人の絵が多くなってきました。

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女の子を描くと、すぐ「アンニュイ」とか「儚い」って言葉が使われがちじゃないですか。描いている側としても、女の子の曖昧な表情を見て、見る人が勝手に色々考えてくれるのはおもしろいんですけど、それはある意味、楽でもあるなって。今はそこからちょっと離れたいっていうのがあります。

Q8.仕事として絵を求められる際に、自分の表現と先方から求められるものの間で苦労することは?

ありがたいことに、今までの仕事は私の表現を見てもらって頼んでくださる方が多くて、「こうじゃないといけない」といった制限はあまりなく、「自由にやってください」といったものが多かったです。でも、仮にクライアントから明確な指定があったとしても、仕事だったら自分の絵の表現は出しつつ、ちゃんと割り切ってできると思います。

Q9.今回、思い入れのある場所として、渋谷のミニシアター「UPLINK」を挙げていただきました。その理由は?

制作作業は家でやってるんですけど、UPLINKには映画をよく見に来ます。私、デヴィット・リンチがすごい好きで、最近だと『デヴィット・リンチ:アートライフ』を見ました。ほかにも、パク・チャヌク監督の『お嬢さん』もUPLINKで見ましたね。

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映画は、中学3年生の時に中島哲也監督の『告白』を見て、けっこう感動して……。そこから、『イージー・ライダー』とかアメリカン・ニューシネマにはまって、どんどん映画好きになってきた感じです。映画からインスピレーションをもらうことは多くて、見た映画の雰囲気とか色味、考え方に影響を受けます。

大学の卒業制作も、映画の中で一瞬で死んでいくキャラクターのシーンを集めて、50号くらいのキャンパスに1枚ずつ、5枚の連作シリーズとして描いて、それを洋服にプリントして、ブランドとして展開するようにしました。『13日の金曜日』とか『アメリカン・サイコ』のシーンを引っ張ってきてます。

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Q10.映画のほかに、日々創作のエネルギーを蓄えるためにやっていることは?

一人で家にこもって作業してると本当に落ち込むので、定期的に人と会うのはすごい大事だなって思います。最近見た映画とか自分の描いている作品の話をすると、自分では思わなかったことも教えてもらえたりするので、自分のためになってますね。

Q11.創作のモチベーションとなる感情は?

2年くらい前までは、けっこう怒りとか悔しさみたいな気持ちをモチベーションにしていました。「とりあえず有名になりたい」「仕事をやりたい」「絶対に負けたくない」っていう気持ちが強かったです。でも、それで作品は生み出されるけど、自分はあまり楽しくないな、って思ってしまって。その頃に本当に落ち込んだことがあって、何も手がつかなくなってしまったんですよ。そこで、マイナスの感情だけが絵を描くモチベーションになるわけじゃないってことに気づきました。

最近は、楽しい気持ちで描くことが多くなりましたね。例えば、今なら「洋服のブランドを頑張りたい」とか、前向きに目標を設定して、それに向かって頑張るっていうことがモチベーションになっています。周りの方に期待してもらっている分、その思いを返さないといけないっていう気持ちが強くなってきました。

Q12.今後の野望は?

ウェブの広告の仕事だけでなく、みんなが手に取ってみてくれる媒体の仕事もしたいです。雑誌の表紙とか、書籍の装丁画とか。あとはやっぱり、映画の仕事もしたいですね!

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PROFILE
雪下まゆ / Mayu Yukishita
1995年生まれ、イラストレーター。2018年、多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業後、フリーランスとして活動。ランジェリーブランド「feast」原宿ラフォーレポップアップショップへのイラスト提供やシンガーソングライター国府達矢のオリジナルアルバム「ロックブッダ」アートワークなど、ファッションや音楽、雑誌といった幅広い分野から注目を集めている。
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