From YOUth #05|Style Select Shop まほろ 清野陽平

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あらゆる「商品」が合理的につくられ、対価さえ支払うことができれば、ほぼなんでも手に入れることのできる現代。選択の自由がこれほどまで高まっている時代だからこそなのか、その自由を逆手にとり、これまでにない売り方や作り方を目指す異端者たちがいる。連載シリーズ・FROM YOUthでは、そんな新たな売り方・作り方を志向する20代~30代の「店主」たちの試みをエッジなユースカルチャーと位置づけ、インタビューを通じ、時代を生き抜くヒントを探す。

vol.5に登場するのは、東急東横線の妙蓮寺駅そばの住宅街に店を構える、セレクト雑貨店「Style Select Shop まほろ」の店主・清野陽平さん。デザイナーとしての仕事をしながら陶器や磁器などの焼き物を中心に販売する同店。決してアクセスの良いとは言えないこの場所に、どうして店を構えようと思ったのか。話を聞いた。

Text:Yosuke NOJI
Photo:Natsuki KURODA
Edit:Shun TAKEDA

結婚ラッシュをきっかけに痛感した“本当に必要なもの“

Q1.お店を始めたきっかけは?

実は、このお店は自宅のガレージを改装して作ったんです。もともとは東京の小岩の方に住みながら、CDジャケットなどを中心にデザインの仕事をフリーランスとしてやっていたんです。でも、家の事情で実家に戻ることになり、その頃ちょうど自宅を改装する話があった。最初は事務所にしようと考えていたんですが、それだけだとおもしろくないと思いまして。どうせなら、事務所兼お店という形にしてみようと始めたのが最初です。

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Q2.もともと日本の焼き物に興味があった?

それが、違うんですよ。もともと僕は多摩美の情報デザイン学科でメディアアートを学んでいて、卒業後は芸大の院に進もうと思っていたんです。でも結局卒業後もフラフラしていて(笑)。

それで、フリーランスでデザインの仕事をしつつ、時間のあるときに地方の神社やお寺なんかによく行っていたら、日本古来の文化に興味が湧いてきて。それまでは美術鑑賞はもっぱらギャラリーや美術館ばっかりだったんですけど、博物館にも通うようになって。日本の器や着物など“和”のものを眺めるのが好きなんだと気づいたんですよね。

Q3.お店を始めるにあたり、ほかに取り扱う商品の選択肢はなかった?

元々ファッションが好きだったので、最初はアパレルのセレクトショップにしようかと思っていました。でも、震災の影響などもあって、世の中はどんどんミニマルな方向に進んでいる。洋服が好きな自分にしたって、本当に特別なものなら買いますけど、量はいらないぞ、と。しかも、周りを見渡したときに、もうアパレルのおもしろいセレクトショップはたくさんありましたし、自分が好きなブランドは海外のものが多かったので、この場所で自分がやる必然性が見つからなかったんです。

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Q4.最終的に今の形に落ち着いた理由は?

このお店を始めた2014年前後って、ちょうど僕の周りが結婚ラッシュだったんですよ。それで、お祝いにちょっと良い器や雑貨を探すんですけど、横浜近辺には本当に適当なお店が見当たらなくて……。そこで、初めて切実に「お土産にもなる、日本のちょっと変わった“もの”を扱うお店があったらいいな」と思い始めて、今の焼き物を中心に扱うセレクト雑貨店としてオープンすることに決めました。

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空気清浄機を取りに行ったら憧れの作家と繋がった

Q5.お店に置く“もの”を選ぶ基準はある?

もともとビジュアルにまつわる仕事をしていたから、自分の中での“美しさ”の基準があって、それをセレクトしている自負はあります。ただ、実際にお店を運営していく中で、、“親切さ”はとても重要だということに改めて気が付きました(笑)。

かっこ良ければそれで良いっていう考え方をしがちだったんですけど、そういう自分の“エゴ”を知ってもらうためには、“ガワ”の部分を工夫しなければいけない。だから、今は他のお店の陳列方法を参考にしてみたり、自分でポップを書いてみたり、デザイナーとしてWEBサイトのUI / UXを考えていた行為を、リアルな空間でやっているイメージですね。

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Q6.お店を運営する上で苦労したことは?

やっぱり、はじめは全く馴染みのなかった仕入れに苦労しました。父親が建築関係の仕事をしているので、内装についてはざっくり相談できたんですが、この“選ぶ”という行為は誰にも聞くことができないし、任せるわけにはいかない。

だから、最初の頃は東京ビッグサイトや東京ドームでやっている大規模な焼き物の展示会などに行って、そこでこの業界の構造などを肌で学びながら、フィーリングの合う作家さんがいれば、取り扱いさせてもらうようにお願いしたりしていました。ただ、大規模な展示会は、そのぶん他の人も同じものを発見できてしまう。だから、徐々に益子や多治見など、実際に生産地に足を運んで、仕入れを行うようになりました。

Q7.店頭にあるもので、特にお気に入りの逸品は?

全て僕がセレクトしたものなので、全部お気に入りではありますが、たとえば堂本正樹さんの信楽焼は、なんといっても使いやすい。和だけじゃなく、洋食にも合うので、お買上げになる方の多い人気の品物です。それと自分の趣向の1つに使えるだけではなく眺めて楽しい作品というポイントもあります。そういった視点では、永草陽平さんの磁器は長時間の鑑賞にも耐えうる作品だと思います。吸い込まれそうになる鮮やかな色使いと佇まいが気に入っていますね。

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