連載シリーズ・FROM YOUthでは、そんな新たな売り方・作り方を志向する20代~30代の「店主」たちの試みをエッジなユースカルチャーと位置づけ、インタビューを通じ、時代を生き抜くヒントを探す。
vol.7に登場するのは、東京都北区駒込にある靴屋「パリーシューズ」の三代目、中村翔志さん。コム・デ・ギャルソン勤務の後に実家を継ぎ、店舗の業務だけでなく、同店のある霜降銀座商店街のホームページのリニューアル・管理運営も行なっている。大手ファッションブランドの販売員を辞め、20代で家業を継ぐに至った経緯から話を聞いた。
Text:Akira Kuroki
Photo:Shin Hamada
Edit:Shun Takeda
商店街で育ったから、商店街で生きていく
Q.1 お店を継いだきっかけは?
ぼくは四人兄弟の末っ子長男で、生まれた時から男の子がお店を継ぐものっていうか、昔から将来的にはやるんだろうなと思っていました。家業のルールではないですし、明確なきっかけはそんなにないんですけどね。
この仕事に就く前に、洋服の販売員をやっていました。その経験もあって、ものを売るというか、接客がすごく楽しくて。なので抵抗もなく、自然となりゆきに近い感じで家業は継ぎました。
Q.2 もともと心積りがあった?
高校あたりから、実家を手伝おうというのは頭にあって。それで販売員の仕事もまる3年くらいしかやってないんです。30歳くらいになったら継ごうと思ってたんですけど、初代のおじいちゃんが年齢的にも体力的にもお店に立てなくなっていて。またお店も忙しく、人出も足りなくなっていたので、自分のイメージよりは早くお店を継ぐことになりました。24歳のときなので、5年前です。
Q.3 継ぐことに不安はなかった?
なかったですね。商店街に育てられたじゃないですけど、昔から家がお店をやっていて、学校とか終わってお店に帰ってくるっていうのが自然だったんで。仕事の様子とかずっと見てましたし。
お店を継ぐことになって、ホームページをリニューアルするときに、商店街の全店舗を取材しに行ったんです。その時に、商店街の人たちの僕のイメージが、赤ちゃんとか小学校くらいのままだったんで、「お前大きくなったな」というところから始まって(笑)。改めて町の人たちと関わるようになりましたね。
お店の情報ではなく、店主の人柄が見えるホームページ
Q.4 商店街のホームページをリニューアルしたきっかけは?
もともと母が商店街の広報などを担当していて、ずっとホームページ自体もあったんですけど、レトロな…インターネット時代初期の「あなたが何人目の訪問者です」ってあるようなやつだったので(笑)。それでそろそろリニューアルしようというタイミングで、ぼくに話が来たんです。
その時がお店を手伝って2~3年目のときでした。ようやく慣れてきて、ちょっと町に還元しようじゃないですけど、自分が育ってきた商店街になにかプラスになることができないかなと思っていて。まさかあんなに立派なホームページつくってもらえるとは思わなかったですけど。
Q.5 ホームページはどのように制作を?
ぼくは服飾の専門学校に通っていて、なにか困ったら頼りにしている先生がいたんです。その先生に連絡して、ウェブデザイナーをやっている知り合いを紹介してもらい、その方に作っていただきました。
そのデザイナーの方には、実際に何度か商店街に来ていただいて、「商店街っぽくないホームページをつくろう」という話になりました。お店の情報よりも主人の顔が見えて、安心できるようなサイトを目指しました。誰が働いているのか、どんな人柄のひとが働いているのかってところを前面に出しているので、下町の温かみあるホームページになったと思います。
立ち上げの時は、プロの写真家の方に撮ってもらいましたが、現在の更新作業や取材撮影は、ほぼ僕一人でやっています。日々更新している写真はその方に一から教わって、めちゃくちゃ練習しました。
Q.6 商店街ならではの苦労は?
新しいイベントの企画提案もしますが、なかなか実現が難しいことですね。ぼくはこの商店街に関わる人間の中でわりと若いほうで、役員の方々などは僕の父と同じ50〜60歳くらいの世代なんです。彼らはバリバリ売れているときにお店をやっていたので、当時の商店街を盛り上げていたというプライドもあります。商店街も時代によって変わってくるので、僕としては現在の形にあったイベントを提案したいんですけど、なかなか受け入れられなかったり。
やりたいことは出来て半分くらい。もっとやりたいんだけどなぁとは思います。自分のお店でやるならすぐできますけど、商店街ってうちの場合は50店舗分の塊なので、スピード感を持って企画するのは難しいですよね。当たり前といえば当たり前ですけど。
Q.7 若い世代のお店は増えている?
徐々にですけど、増えて来ましたね。商店街の人たちも高齢の方が多くて、70〜80歳の方たちが体力的にしんどくなってお店を閉めて、その後の空き店舗に駒込の雰囲気を気に入ってくれた若い人たちがお店出してくれています。その結果30〜40代のひとが増えましたね。最近だと美容院とか、チェーン店ですがメロンパン屋さん。あとはバーや、コーヒー屋さんもここ2年ぐらいで出来ました。結構入れ替わりがあって、空いてもすぐに入るので、まだ空き店舗らしい空き店舗はないですね。