From YOUth #11|FL田SH 高田光 吉田尚弘

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あらゆる「商品」が合理的につくられ、対価さえ支払うことができれば、ほぼなんでも手に入れることのできる現代。選択の自由がこれほどまで高まっている時代だからこそなのか、その自由を逆手にとり、これまでにない売り方や作り方を目指す異端者たちがいる。連載シリーズ・FROM YOUthでは、そんな新たな売り方・作り方を志向する20代~30代の「店主」たちの試みをエッジなユースカルチャーと位置づけ、インタビューを通じ、時代を生き抜くヒントを探す。

vol.11に登場するのは、渋谷区外苑前に去年8月にオープンしたオルタナティブスペース「FL田SH」を運営する吉田尚弘さんと、高田光さん。同スペースを人が行き交うストリートと定義し、展示、ショップ、リソグラフ印刷のスタジオとしての運営をメインに、自在な活動を行なっている。自称「どんぶらこスタイル」の運営方針に至ったきっかけと現在について、話を聞いた。

Text:Akira Kuroki
Photo:Shin Hamada
Edit:Shun Takeda

開かれた通路としてのショップ

_Q8C7671Q1.このスペースをはじめたきっかけは?

吉田 尚弘(以下、吉田)この辺の地域全般そうなんですが、古いビルを毎年のように取り壊すかどうか問題みたいなのが発生しています。でも人は住んでいて簡単には取り壊せないから、賃上げが定期的に行われているんですよね。

それで去年の7月に賃料が1.5倍くらいになって、ここのオーナーのひとが、その分の家賃を払ってくれる人いないか、その代わり好きにしていいよって条件で人を探していて。じゃあ「好きにします」といって、お借りしたんです。

高田 光(以下、高田)この部屋の隣には昔、ワタリウム美術館の和多利さん兄弟が住んでいたそうで、去年の8月1日にオープンしたときにいらしてくれて、「懐かしいね」って言ってましたね。いまはあんまり住んでる人はいなくて、ほとんどデザイナーとか建築事務所、ファッション系のアトリエみたいになってます。

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Q2.2人の関係は?

吉田 もともと僕ら2人が遊び仲間という感じで。高田くんが「キャンプ行きましょう」って言って、町中でキャンプしてたんです。渋谷とかで(笑)。

そういう感じで、外での表現活動かつ遊びみたいなのをやってました。もともとお店をやろうみたいな話は一切してなくて、この場所が使えるという話が突然降ってきたときに、「開かれた場所としてなにかできるんじゃないか?」と漠然とした感じでスタートして、やりながらどんどん調子を合わせてきたという感じです。

吉田 高田くんはもともと8畳ぐらいの家にリソグラフのプリンターを置いていたりしたから、それを持ってきて、印刷所兼ギャラリー兼ショップ。部屋全体は、オーナーのひとたちとの共有スペースとして。手前の部分をFL田SHのスペースとして使わせてもらっています。

ぼくらはショップというのに興味があったけど、ただの白い箱には興味がなくて。もっと有機的で、ひとが何かを求めたり、求めずにただふらっと立ち寄ったりする通路というか。それをぼくらはストリートと呼んでるんですけど、ストリート的な空間を作りたいなって考えて、いまに至るという感じです。

Q3.2人はこの地域にゆかりはあった?

高田 ゼロゼロのゼロですね(笑)。まったくないです。

吉田 ワタリウム美術館に行くときに来るだけで。本当になんの縁もゆかりもないし、ここで何かしたいという欲もなかった。でもこの場所を起こしてから「あっ、ここはデザイナーの聖地なんだ」とか。徐々に周りのギャラリーのひとたちとも仲良くなって、情報交換したり。微妙に知り合いが増えてきて。「なんだこれ?」っていう感じです(笑)。

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Q4.この場所の居心地は?

吉田 居心地はすごく良いです。ここのビルのひとたちとも徐々に仲良くなって来てて。なんかクラブの部室がいっぱい集まってるような感じというか。それぞれそんなに接点はないんですけど、会ったら喋ることも多いです。

この前は、隣の部屋にスロバキア人の人が滞在していて、そのとき僕らが中庭ですごい寒いなか映像作品の上映会をやってたんです。そしたら彼らがきて「お前らこんなんじゃダメだ」って、熱いお茶と、ヴィンテージウィスキーを持って来て、いっしょに飲もうって言ってくれて。

あとはワタリウム美術館地下にあるアートブックショップ、オンサンデーズのオーナーのご夫人も毎週来てくれたり、気にかけてくれるひとが増えてるのありがたいですね。

高田 いままでこういった開かれた場所を運営したことがなかったから、地域のひとたちとの関係性がどんどん変わっていくのがおもしろいというのはありますね。

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Q5.店の内容をまとめると、ギャラリー、ショップ、印刷所?

吉田 そうですね。まぁ、やっぱり単純に作品を展示するっていうよりかは、理想としては町とどう関わるか? っていうのはすごく考えてるんです。それが別に町の価値をあげるとかっていう不動産的な話というよりは、もうちょっと路地裏的なテーマ。どうやって「外」に出ていけるかなっていうのは毎回考えています。

展示のときもテーマは町に関係するとか、路上的な文脈を持つものになるよう意識的にやっています。

そういう意味で単純なホワイトキューブみたいなのは、閉じられた場所だと思っているから、ちょっと違う。もうちょっとストリート的でありたい。だから来てもらった人とは、できるかぎり喋るっていうのは意識的にしてます。「なんで来たんですか?」とか(笑)。めちゃめちゃ喋って、3~4時間喋ったあとに作品買ってくれる人とかもいたりして。こっちはこっちで儲けたいみたいな意識そんなないんです。どちらかというと、コミュニケーションのほうを優先してるというか。

どんどん町とも関わって、今年はラグビーのワールドカップもありますし、来年のオリンピックも結構近いので、そのときに多少はなんか勝手に関わろうとは思ってます。それがひとつのポイントかなと思っています。

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