民具木平のキャッチアンドリリース #05 カバー

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市井の人々が、自らの暮らしのためにつくりだす様々なモノのリサーチを続ける、デザイナー・野本哲平。路上の発明品を、”現代の民具”と捉える彼の視点からは、人々の生活習慣や、町と人とのリアルな関係を垣間見ることができる。

本連載では、野本哲平が日々のリサーチで発見(キャッチ)した状況やモノなどを応用し、彼のデザインレーベル「民具木平」の新たなプロダクトとして制作。ただ採集するだけでなく、完成したプロダクトを路上に放流(リリース)し、還元するという、路上環境に配慮したサステイナブルな企画である。

第5回は、長野県で偶然立ち寄った古民家での出会いから。ものを大切にする文化の表れとも言える「カバー」を制作します。

Text & Photo:Teppei Nomoto
Edit:Akira Kuroki

キャッチ編:長野県の民家にて

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ことの発端は、長野県茅野市のご実家に帰省中の知人を訪ねたときのこと。

彼女のご親類である、丸山さんというかたの所有する古民家を見せてもらったことから始まりました。

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のどかな古い町並みが残る地区。一度は長野とかにも住んでみたいよなあなどと思いつつ古民家へ。

POPEYE 1989年9月20号「シティボーイ・マニュアル」。
POPEYE 1989年9月20号「シティボーイ・マニュアル」。

古民家でよくあることとして、古雑誌や古新聞が当時のままの状態で保管されていることが多い。

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古民家を案内していただいただけでもありがたいのに、お昼ご飯までご馳走になりました。

美味しいお蕎麦と、とれたて野菜の天ぷら、とれたてのブルーベリーとスイカ、きゅうり……etc。これ以上のご馳走はない。たくさんのお蕎麦と、食べきれないほどの天ぷらの組み合わせって実家で過ごす休日みたいでうれしい。

家族総出のおもてなしに感謝感激、、ごちそうさまでした。

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そろそろおいとまさせていただこうと軒先に出た時に目があったのがこちら。カバーである。

実はお昼をいただいている時から、手作りの品々で構成されるインテリアの設えを見ていて、薄々感づいてはいたのだが、突然お邪魔させていただいた知人の親戚のお宅でバシャバシャ写真を撮りまくるのも無礼だなと思ったので、撮影はしていないのが悔やまれるのであるが、丸山さんのおばあちゃんは根っからのCivil Engineerだったのである。

こちらはお手製プロダクツのうちの一つで、身の回りの古布で作ったカバーなのである。もともとは加湿器の台として作ったとのことであるが、こうして軒先に置いておけばちょっとしたこしかけにもなる。

素材も身の回りのものを利用していて環境負荷も限りなくゼロに近く、そして何よりおしゃれである。デザインに精通した友人の言葉を借りるならば、まるでオランダ人デザイナー、ヘラ・ヨンゲリウスばりの色使い、ファブリックづかいである。

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勘のいい読者の方ならお察しであろうが、カバーの土台となっているのは一升瓶を運ぶための通い箱(通称P箱)である。カバーから少しだけはみ出た、P箱が微笑ましい。

そう、僕らの上の世代の人たちの歴史は、あらゆるものにカバーをして来た歴史であると言い換えてもいいくらい、人は様々なものにカバーをしてきた。電話や便座のカバーから、道すがらに佇むお地蔵さんの帽子や前掛け、JR浜松町駅のホームにある小便小僧のブロンズ像。キッチンの流し台の前の床に敷くマットも、いずれ見かけなくなるカバーの一種になるかもしれない。

それはおそらくものを大切にする心からはじまる文化だと思うのだが、カバーの効能を分解するといくつかに分類ができると思う。

まずホコリや汚れからモノをまもる盾としての役割。また盾となるカバーにホコリや汚れがついても、洗濯が可能な衣となる。また、衣は視覚的におしゃれである。そして今回の場合で見られるような、クッション性と熱伝導率のコントロールだ。

はい、今回は念願のカバーです。

メイク編:日暮里繊維街にて買い出し

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東京という都市は、モノを作る人間にとってはありがたい街で、特に東側のエリアには様々な材料や業種・商売に特化した問屋街のような街が点在している。

念願のカバーを作るための材料を買い出しに、日暮里の繊維街へ向かった。

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あらゆる繊維関係の材料や製品、副資材や道具関連のお店が軒を連ねる。
僕でも着れる、趣味のいい婦人服などが激安で売られてることもとよくあるから気が抜けない。

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もはや、どこまでが備品でどこからが商品なのかすらわからない。形骸化されておらず、それが専門店のいいところである。

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行きつけの生地屋さんへ。

何千種類とあるであろう生地の中から、今回のカバーに適した生地を探す。
一期一会の真剣勝負である。

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この店はあらゆる生地を取り揃える。

違うお店ものぞいてみる。
ウールの厚手の生地を取り揃えるお店のようだ。

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一通り、全体像をつかんだので、しばし休憩。

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近くの店で腹ごしらえだ。

この通りでも一際異彩を放つ、建物が巨大な樹木に飲み込まれているかのような素敵な外観の老舗洋食店・ニューマルヤさんに初めて入店。

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店内にまで侵食しつつある樹木の蔓。

ちょうどタイミングが良かったようで、ご主人に話を伺ったところ、もう少ししたら伸びすぎた木々をバッサリと剪定するとのこと。この野性味あふれる姿を見れて良かった。

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ポークソテーランチを注文。

むむ、豚肉の素材もよく、隠し味には塩麹か? 深くコクのある味付けで美味しい。絶品でした(塩麹は私感です。入ってないと思います)。

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さて、休憩前にアタリをつけて置いた生地を再度確認し、何種類かの生地を購入。

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まち針や、チャコペン、型紙など、副資材も購入。

帰る頃には日が沈んで夜になってしまった。結構買った。

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