本連載では、野本哲平が日々のリサーチで発見(キャッチ)した状況やモノなどを応用し、彼のデザインレーベル「民具木平」の新たなプロダクトとして制作。ただ採集するだけでなく、完成したプロダクトを路上に放流(リリース)し、還元するという、路上環境に配慮したサステイナブルな企画である。
第6回は、エッジなデザインを思いやりと安全で包み込む、「セイフティ・ファニチュア」を制作します。
Text & Photo:Teppei Nomoto
Edit:Akira Kuroki
Special Thanks:Rumiko Koike, Masaki Yato (MYDO LLC)
キャッチ編その1:スターバックスコーヒー太宰府天満宮表参道店
ご無沙汰しております。
民具木平のキャッチアンドリリース 第6回は「セイフティ・ファニチュア」です。
当連載、キャッチ編で九州ネタが多いのはなんでなんだろう?と自分でも不思議なのですが、今回はリサーチ a.k.a 観光で訪れた福岡県の太宰府や、東京都杉並区の友人宅など、目を凝らせば至る所で見ることのできるお馴染みのアレとの出会いから。
初めて訪れる太宰府を目指し、西鉄福岡(天神)駅から電車に乗った。
主な目的地は太宰府天満宮と近くにある竈門(かまど)神社です。
自撮り棒を持った大勢の観光客グループの間を縫い表参道を歩いていると、突如奇抜な意匠の木の格子が現れた。スターバックスコーヒー太宰府天満宮表参道店だ。
聞くところによると、最近だと新国立競技場もデザインしたことでも知られる建築家の隈研吾氏のデザインとのことである。どうやら奇抜なデザインに引き寄せられて、観光客や建築を学ぶ学生などの話題のスポットになってる模様である。
店内に入って見ると、客席周辺の格子の突き出した木口にはクリアのコーナーガードが安全の為に施されていた。
現代的で奇抜な格子と、透明のコーナーガードというダッドなコーディネイトに衝撃を覚えた。
無事、太宰府天満宮に到着&参拝。
社務所の建物は友人の祖父が設計したとのことであり、とても立派な建築だった。
境内にはライアン・ガンダー等のアーティストの仕事がポツポツと見受けられ興味深い。
その後は竈門神社(ジャスパー・モリソンさんがデザインした石の椅子がある)へバスを利用して向かった。
行ってみてわかったのだが、ここは縁結びで有名な神社らしく、バスの乗客は私を除いてほとんどが若い女性という、なんとも不思議な状況でした。
このような構図は、以前にも友人の息子の七五三の写真を撮影させてもらった時に東京大神宮で経験していたので慣れていた。
キャッチ編その2:デザイナーの友人宅
さて、東京に場所を移すとするが、デザイナーの友人宅でもコーナーガードをキャッチした。
古くからある雑木林に隣接した閑静な住宅地に、シンプルな内装、モノの量も極めて少ない禁欲的でミニマルな、とても気持ちの良い住まいである。
そこで見つけたD.I.Yでつくられたテレビ台が素晴らしかったのである。
デザイナーという職業柄、または主の生粋の几帳面な性格がそうさせるのであろう、ここまでコーナーガードをポジティヴに美しく施している案件は初めて見た。
我が子の安全を思うダッドな親心と、センスから生み出されたハイクオリティなセイフティ・デザインに感動した。施工は夫人が担当したとのこと。
子の安全を願い制作されたそのテレビ台は、今一度セイフティ・デザインと真正面からポジティヴに向き合いたい、そう素直に思わせてくれた。
「さて、何を作ろう。なんでもいい。なんでもいいし、どうとでも使えるもの。」
そんなモラトリアムな自問自答をしている時には箱馬を作るのが一番だ。
民具木平の木製箱馬をベースに安全策を施そう。
あるある。
普段あまりチェックしてないコーナーだが、安心クッションだとかガードクッションという名称で色々売られてる。
赤も間違いなくかわいいよなと思いつつ、今回は無難にグレーと透明の2色をサンプルとして購入。
コーナンでたくさん選択肢があったけど、後悔しないように一応ビバもチェック。
両店共負けずとも劣らずの品揃えで、セイフティ・デザイン市場の大きさを肌で感じる。
コーナンでも思ったがこのコーナー、普段あまり寄り付かないだけにおもしろい。
Civil Engineers 御用達の気の利いた便利グッズがたくさん並んでいる。
蓄光に弱いんだよな。世代なのかな。
スーパーボールとか、ホッピンアイとか、水に入れとくと大きくなるカエルみたいのとか……ゴムっぽい蓄光へのアコガレ。
動カンゾの上にカグスベールがあったり、
もはや犬猫の肉球のような脚先パーツ etc。
ここで私は気がついた。
コーナンもビバも同じような商品名・色・価格で、プライベートブランドとしてコーナーガードを販売していたのだが、微妙に質感が違う。
ビバの方が密度が高いゴムっぽい弾力でカチッとしていて、コーナンの方がふわふわのスポンジっぽい感じである。
好みの問題だが、今回はビバの方の質感があっている気がしたので、ビバで揃えることにした。
さて、コーナーガード関係は一通りカゴに入れたので、次なる安全策だ。
ビックリマンシールで鍛えられた世代につき、プリズムとかホログラムとかにもめっぽう弱い。リフレクターにも。
今はいろんな素材が手軽に買えていい時代だよなあまったく。
選択肢がたくさんある。
この手の商品のネーミングセンスとか擬音語感とか最高である。
最近の社会の風潮として、メーカーなどでは新製品は若い人に開発させようみたいな流れがある気がしますが、私としては横一列な就職活動で入社してきた若手より、様々な人生経験を積み、内に秘めたる冒険心を熟成させてきた古参社員の職人的センスの方を信じている。
さて、色々材料を買いこんだので、メイクの前にランチタイム。
直前の案件の疲れが溜まっているので、豚肉でもいただいてビタミンBを補給したいところである。とんかついもやに立ち寄ったが、ランチタイムにつき混雑。列をなしていたので別な店へ。
いもやの路地を出たところに、今まで気づいたことがなかった店発見。
看板のお魚の絵もいい感じ。
築60年くらいと言ってたかな?店内も年季が入っていてとても凝った作りでいい雰囲気だ。
こういう偶然の発見はうれしい。
甘辛い名古屋風?の味付けだった。
甘辛い味付けは自分ではしないのでたまにはいいだろう。
内部空間が多彩でいい雰囲気なので、ぜひ夜に再訪してみたいお店だ。
無事にビタミンBも補給できたので次はメイク編である。
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