M.E.A.R.Lが提唱する、個の戦術からひもとくまちづくり

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「MAD City Edit And Research Lab」の頭文字を取った本メディア・M.E.A.R.Lは、まちづくりの最小単位としての「個人」に注目するバーティカルリサーチメディアとして、2017年5月にローンチされた。この「MAD City」とは、株式会社まちづクリエイティブが“クリエイティブな自治区”を標榜し、千葉県・松戸市のJR松戸駅周辺に創り出した仮想都市空間。2010年のプロジェクト開始以来、200人以上のクリエイティブ層を誘致してきた同社がM.E.A.R.Lで目指すものとは何なのか?

「MAD City」の成り立ちから、バーティカルとは何を指すのかまで、M.E.A.R.Lディレクターに就任した武田俊を聞き手に、プロデューサーを務める寺井元一と小田雄太の2人に話を聞いた。

Text:Yosuke NOJI
Photo:Natsuki KURODA
Edit:Shun TAKEDA

どの町にいるかによって、その人の人生は大きく変わる

武田 M.E.A.R.Lがローンチされてから約1ヶ月が経ちました。このタイミングで、改めて母体とも言える「MAD City」立ち上げの経緯からM.E.A.R.Lがどこを目指しているのかまで整理できればと思います。まず、お二人の経歴から簡単にうかがえますか?

M.E.A.R.Lディレクター・武田俊
M.E.A.R.Lディレクター・武田俊

寺井 今はまちづくりの会社を経営しているけど、実はもともと町そのものには興味がなくて(笑)。2001年に大学を卒業してから、NPO法人のKOMPOSITIONを設立して、渋谷を中心にアーティストたちの活躍できる「場」を作るって活動をずっとしていました。

株式会社まちづクリエイティブ代表取締役・寺井元一
株式会社まちづクリエイティブ代表取締役・寺井元一

武田 まさか、町に興味がなかったとは…(笑)。アーティスト支援をしようと思った動機はなんだったんですか?

寺井 僕が大学を卒業した2001年頃ってものすごい就職氷河期で、おもしろいと思っていた周りのクリエイターたちが焦ってみんな活動を辞めちゃったんです。僕は続けてほしいと思っていたから、それを目の当たりにしたときにすごくショックを受けました。

その人たちがもっと活動を続けられるようにするにはどうしたらいいのか?ってことを考えたのが最初かな。だから、町にクリエイターやアーティストが活躍できる場所や機会を増やすことを目指して、渋谷の壁をグラフィティのようなストリートアートでジャックする活動なんかをやるようになった。

武田 小田さんは、いかがですか?

小田 僕は多摩美術大学を卒業してから明和電機に入って、アーティストと一緒に作品を作るってことをしていました。制作会社で決まったCLの制作業務をしていたわけじゃないので、僕にとってデザインの指す範囲って非常に広いんです。

途中制作会社で働いたこともあったんだけど、単純な受け仕事に物足りなさをすごく感じたんだよね。それで、もっと根本的な問題に向き合えるプロジェクトをやりたくていくつかのNPOに参加していた時期に、寺井さんのNPO・KOMPOSITIONを知って、コンタクトを取った。

株式会社まちづクリエイティブ取締役・小田雄太
株式会社まちづクリエイティブ取締役・小田雄太

寺井 それが2005年ぐらいだよね。それから小田さんに僕がやっているプロジェクトのデザインをお願いしたりしているうちに、一緒に活動するようになった。

武田 そういう出会いだったんですね。その後、寺井さんは2010年に株式会社まちづクリエイティブを立ち上げられますけど、もともと町に興味がなかったのに何か心境の変化があったんですか?

寺井 それまでの僕にとっては、町はあくまで利用する相手って認識だったんだけど、NPOの活動で渋谷区や地域住民と話し合いをする中で、もうこれは町自体を変えなきゃ話にならないと。

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武田 なかなか既存の行政システムや慣習の中では、やりたいことを実現させるのが難しかったと。

寺井 それと2008年ぐらいの時期に、中目黒とかに住んでいた周りのカルチャー感度の高い人たちがいっせいに湘南や千葉の外房に大移動するみたいなことがあったんです。そのときに、町って単純に利便性だけじゃなくて、そこにどんな人がいるのか?どんな文化があるのか?ってことが一番重要なんだろうなと気づいて。

もしかしたら、どの町にどのタイミングでいるかによって、その人の人生が決定的に変わってしまうかもしれない。そういう町自体の強力な力に気づいたのが理由ですね。

武田 既にある町を利用するのではなく、町自体を作っていく。1つレイヤーが上がったんですね。

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