M.E.A.R.Lの運営元・株式会社まちづクリエイティブが、千葉県松戸の「MAD City」にて、“食べられる景観”とコラボした新企画「浮ヶ谷邸プロジェクト」をスタート。
同プロジェクトは、JR松戸駅から千葉大学までの道のりに“食べられる植物”を植えることで「エディブルウェイ(食べられる道)」を作り、それらの素材を使った取り組みを目指す千葉大学の企画と連携して、空き家を耐震工事して再生し、地域に根差した飲食文化を生み出そうというもの。エディブルウェイでは、2016年よりプランターの配布と植物の植え込みを徐々に始めており、既に住人同士のコミュニケーション向上などの成果を見せ始めている。同プロジェクトは具体的な物件を動かし、エディブルウェイの拠点をつくってイベント等企画で情報発信に努めるとともに、今後は実際に飲食店を誘致しようとしている。
今回、同プロジェクトの一環として、以前FROM YOUthでも取材させていただいた「Daily Coffee Stand」店主の小川優さんと、同社代表兼M.E.A.R.Lプロデューサーの寺井元一との対談イベントが開催された。「個人店とまちづくりの関係性」をテーマに、大いに盛り上がった同イベントの模様をレポートする。
Text:Yosuke NOJI
Photo:Natsuki KURODA
Edit:Shun TAKEDA
町を変えていこうとする人が集った夜
イベント会場になったのは、以前まで酒屋店主の住居として使われ、現在は空き家となっている「旧・浮ヶ谷邸(仮)」。ゆくゆくは地域住人交流の場として再生することが予定されているこの場所で、今日はこれからのまちづくりや松戸の未来について考えていく。
イベント開始の19時が近づくにつれ、ガランとした空間を徐々にお客さんが埋めていく。最初に口火を切ったのは、本日のイベント主催者でもある寺井。ここ松戸で取り組んでいる「MAD City」プロジェクトの話を中心に、佐賀武雄市での取り組みなど、現在進行系で進めているまちづくり事例をいくつか紹介。来ていたお客さんも、その一風変わったまちづくりのやり方に真剣な面持ちで耳を傾けている。
当日の来場者の大半は、実際に地元や住んでいる町に問題意識を抱えてイベントに参加した人ばかり。越谷に住んでいるというある男性は、まさに古民家を活用したプロジェクトが地元で持ち上がり、今回はその勉強をするために参加することを決めたと話していた。
こうして、熱量の高いオーディエンスに囲まれながら、イベントはスタート。
次に、本日のゲストである「Daily Coffee Stand」店主の小川優さんによるお話。
大学卒業後に広告代理店で働いていた小川さんは、体調を崩したことをきっかけに自分でお店を始めることを決意。高円寺のカフェ「here we are marble!」と、岡山の生活用品とコーヒーの店「bollard」での修行を終えて、現在は地元である西武新宿線・野方駅そばに「Daily Coffee Stand」をオープンさせて約1年が経つ。
同店の特徴は、なんといっても地元の人の生活を支えるために、“あって当たり前の存在”として毎日営業を続けていること。「まだ1年だから偉そうなことは言えない」と謙遜しながらも、少しずつ近隣の人の生活に組み込んでもらい始めていると実感を込めて話す。
その背景には、周りからの意見を簡単に鵜呑みにせず、「自分の想いをブレさせずに我慢したことにあるかもしれない」と小川さん。周りからは「人が少ない時間帯は店を閉めた方が良いんじゃないか?」「食事やお酒を出した方が儲かるんじゃないか?」など様々なことを言われたというが、「理想の形は人によって違う」と自らの信念を貫いた。
今日のイベントでは、店主としての立場から、「個人店とまちづくりの関係性」をテーマに寺井と対談を行う。
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